「適応的市場仮説」コロナ禍で読むべき理由 マーケットを理解するための「進化生物学」

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無機質な市場観から有機的な市場観へ。マーケットの「適応」を分析したアンドリュー・ロー著『Adaptive Markets 適応的市場仮説』の読みどころを解説します(写真:metamorworks/iStock)
コロナ禍で金融不安が心配される中、「効率的市場仮説」に代わる新理論として「適応的市場仮説」が注目されている。「適応的市場仮説」とは、金融市場も生物と同じように環境変化に「適応」するというものである。マーケットの「適応」を分析した研究の集大成、アンドリュー・W・ロー著『Adaptive Markets 適応的市場仮説』の読みどころを解説する。

「適応的市場仮説」とは何か

アンドリュー・ローの『Adaptive Markets 適応的市場仮説』が上梓された。株式市場をはじめとするマーケットの性質を分析する書籍である。とくに投資家には非常に深い示唆を与えるものだ。

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“適応的市場”(adaptive markets)とは何だろうか。実はこのタイトルにはローの挑戦的な野心が隠されている。それを理解するために必要なのが、それと対をなす“効率的市場”(efficient markets)という概念である。

効率的市場仮説とは、簡単に言うと「マーケット参加者が皆合理的に効率性を追求する」という経済学上の仮定である。その合理的な効率性の追求は理念的に徹底しており、①参加者がもれなく全員、②いつ何時も必ず、③ 間違いなく正確に、④ それぞれ独立して、行動するというもので、経済学の理論的思考を貫く原点ともなっている。

アンドリュー・ローが専門とする「ファイナンス理論」も経済学の一分野であり、効率的市場仮説をその礎としている。ファイナンス理論は、確率統計を駆使して未来の価値算定を行うもので、今ではいわゆる「金融工学」として応用されているものである。一般的に、現代の金融工学は効率的市場仮説に基づいて構築されていると言ってよい。

しかし、アンドリュー・ローはその経済学的な根本原理である「効率的市場仮説」に、本書で異を唱えているのである。

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