温室効果ガス25%削減に挑む--貿易立国存亡を懸け舵を切る日本郵船、船も電池で走る時代へ
太陽光発電の設置進む 船底の摩擦軽減も効果的
「10%減へは順調に進んでいるが、既存船の運航面での改良だけではそれが限界。50年CO2半減など世界の長期目標を前提とすれば、動力源を自然エネルギーや燃料電池へ転換するしかない」(左光真啓・経営委員環境特命プロジェクト事務局長)。そこで計画されたのが冒頭の「2030」である。20年も先の話だが、すでに布石は打たれている。
08年12月に竣工した自動車運搬船「アウリガ・リーダー」には、船舶の推進動力用電力の一部を太陽光エネルギーで賄うシステムが搭載され、現在実証実験を行っている。ただし、太陽光発電の同船電力に占める割合は最大6・9%だが、動力に占める割合は最大0・3%と限定的だ。09年9月の中間報告では、船上での発電量は陸上(東京)で発電した場合より約1・4倍になった。海上は陸上より日照強度が強いうえ、風によりモジュールが冷やされ変換効率が上がったためである。
一方、現在開発が大詰めなのが最大50%の燃料消費量削減(06年度竣工船比、原単位当たり)を目標とする超省エネの自動車専用船(PCTC)である。今年春までに設計を終え、竣工は13~14年ごろ。前方を丸くする、デッキの凹凸をなくすなど風圧抵抗軽減の徹底に加え、船内照明のLED(発光ダイオード)化、水圧抵抗軽減などで省エネ効果を高める。太陽光パネルもデッキ全面に敷き詰め250キロワットを出力する。これらで40%削減し、さらに現状の6000台積みサイズから8000台積みへ大型船化することで自動車1台当たりのCO2排出量を半減させる。
このほか、船底の摩擦抵抗低減への技術開発もユニークだ。船が航行する際、船底と海水との摩擦が進行の妨げとなる。これに対し、双方の間に空気を挟み込むことで摩擦抵抗を低減する。これで燃費が9%向上するという。10年11月に竣工するモジュール船(グループの日之出郵船が発注)に設置する予定だ。