温室効果ガス25%削減に挑む--貿易立国存亡を懸け舵を切る日本郵船、船も電池で走る時代へ

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荷主からの削減要請も 50年には水素燃料へ

「2030」はこれらの技術開発の集大成と位置づけられる。しかし、なんといってもディーゼルエンジンから燃料電池への転換が最大のカギとなる。CO2排出量69%削減のうち32%分がこれによる。現状の燃料電池の大きさでは実用化は難しいが、「将来は現在の30~40分の1に小型化し船舶搭載が可能となる。LNGを燃料とした燃料電池を40フィートコンテナ16本に格納し搭載する」(左光氏)ことが前提だ。さらに、50年には水素燃料となり「ゼロエミッション船」の実用化を目指す(下グラフ)。


 「2030」では自然エネルギーとして太陽光のほか風力も取り入れる。船上に配置された8枚の帆による揚力は1~3メガワット。最大約4000馬力に相当するという。
 温暖化対策への関心の高まりや規制強化により、海運会社は今後荷主から貨物輸送にどれだけCO2を排出したかの情報開示を求められる。メーカーなどでは製造、輸送、使用、リサイクルの各段階でCO2排出量など環境負荷を計測するLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)を取り入れる企業が増え、それらを表示するカーボンフットプリントなどを採用する製品も出てきている。よって、海運会社では排出量把握とその削減が競争力に直結する。

ライバルの商船三井はCO2を5割削減する自動車船「イシンI」などの構想を発表した。地産地消への支持が広がる中で、貿易立国である日本が生き残るためにも、CO2削減は不可欠。海運業界の生き残りを懸けた技術革新が加速しつつある。

■日本郵船の業績予想、会社概要はこちら

(野津滋 =週刊東洋経済)

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