小池都知事「満員電車ゼロ未達成」の必然的要因 2階建て電車は論外、外出自粛で達成したが
筆者は小池百合子氏に「ふだん電車に乗るか」と問いかけたことがある。小池氏は、「乗りませんッ」と断言した。2014年にイベント列車を取材したときのことで、小池氏は衆議院議員を務めていた。ふだん電車に乗らない人は、通勤電車の実情を知らない。都民の失笑を買ってようやく現実離れしていることに気づいたのか、小池氏は「2階建て電車」を語らなくなった。
2020年6月12日、都知事選再出馬に際して記者から「満員電車ゼロ」の進捗を問われると「揶揄するご質問か」と不快感をあらわにしたという。実態を知っていて質問する記者もどうかと思うけれど、小池知事に反論できる実績がないことも事実である。
かけ声倒れの「時差Biz」
2階建て電車を引っ込めた小池都政は、ソフト的な解決策に注力した。それが2017年夏、2018年夏と冬に実施された「時差Biz」と、それを引き継いで2019年から展開されている「スムーズビズ」だ。名前は小池百合子氏が環境大臣だった頃に話題となった「クールビズ」にあやかった。
時差Bizは都内の通勤者に対して時差通勤を啓蒙するキャンペーンだ。併せて都内の企業に対して時差通勤制度、テレワーク制度を呼びかけるとともに、都内を運行する鉄道事業者へ協力を願った。スムーズBizは時差通勤とテレワークに加えて、道路、物流も対象とし、2020東京オリ・パラ向けTDM(交通需要マネジメント)に取り組む。
時差Bizキャンペーンの第1回は学校の夏休み期間中で、学生が乗車せず混雑率はほかの時期ほど高くない。そのため混雑解消の成果がキャンペーンの効果か否か判別しにくかった。その後、学校の休みを外した期間で開催された。スムーズビズの推進期間は2019年7月22日〜9月6日で、満員電車解消というより、オリンピック期間中の混雑対策の意味合いが強い。
時差Biz、スムーズビズはどちらも東京の鉄道事業者が参加しているけれども、その参加鉄道事業者の取り組みを見ると、今までやってきたことばかり。時差Bizキャンペーンの報告書には、朝の混雑ピークが若干減り、前後の利用客が若干増えた。これを時差通勤の呼びかけの成果と記しているけれど、大成功とは呼べないほど小さな変化だ。
時差Bizの取り組みが生かされた例として、東急電鉄は2018年3月のダイヤ改正で田園都市線の朝ラッシュ時間前に上り急行電車を増発している。これは2017年の時差Biz期間中に田園都市線で増発した「時差Bizライナー」で手応えがあったからだろう。2018年も田園都市線で時差Bizライナー、東横線で「時差Biz特急」を運行した。2019年のダイヤ改正は田園都市線の朝の上り準急の一部が急行になった。しかしこれは時差Bizの成果というよりも、東急電鉄が大井町線を強化して田園都市線の混雑緩和に成功したためだと思われる。
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