電車の「顔つき」を左右する決定的要素とは何か

貫通扉、表示幕、窓の形状…、さまざまな要因

しかし、三次曲面ガラスの方は、車両メーカーとしてはリスクが高いようだ。このようなガラスは重力によって製造しており、プレスでつくるようにはゆかない。まったく同一のものを再度製造することが難しいので、ガラスの破損、取り替えを考慮して、あらかじめ予備品を含めて生産してストックしておく場合もある。したがって高価でもある。

なお、鉄道車両の前面ガラスは、強度を保つため中間層に樹脂フィルムを挟んだ合わせガラスを使用している。そのことから、全体の一部分だけに色を付け、ガラスだけで上部をサンバイザーのようにすることができる。このあたりも前面窓の大型化に有利に働いたようだ。

ストレート車体と拡幅車体

まずはパーツではなく全体の輪郭には、直線的な車両とふっくら柔和な車両がある。これは、車両の断面形状が越えてはならない上下、左右の範囲を規定した「車両限界」に基づいている。対する、施設のいかなる部分も侵すことが許されない境界線が「建築限界」である。ここで詳細は述べないが、大きくはホーム高さまでの下部と、その上では許容される幅が違う。国鉄由来のJR在来線の車両限界は、基本的に上部が3000mm、下部は2850mmが限界だ。JR発足以前は国鉄と、地方鉄道法に基づく私鉄等で規格が異なった(後者のほうがやや小さい)が、現在は鉄道事業法の中で統一されている。とはいえ施設や設備のサイズを一朝一夕に変えることなどできないので、現在に至るまでJRに対する私鉄の車両限界は、一部会社を除いて狭い。

そうした車両限界の中で、国鉄はクロスシートを基本とする近郊形より上位の車両は、座席幅や通路幅を考慮して拡幅車体を採用、しかしホームに接触させてはならないので裾絞りとなった。電車以前にも寝台車に採用例がある。一方、通勤形電車は上から下まで直線の車体が一般的であった。わざわざ直線の断面にしたわけではなく、もともと旅客車といえば四角い箱だったからである。都市の電車である通勤形と、長距離の客車列車に代わった急行形、通勤にも対応した近郊形という分類は絶対でもあり、車両の構造も規定されていた。そのなかでも通勤形電車は車両数が多いうえ、ドアの数も多い構造のため、車体幅を広げるという発想はなかったのかもしれない。

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