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「Apple Card」がシリコンバレーに与えた衝撃 利益度外視でアップルが金融に参入する理由

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  • 山本 康正 ベンチャー投資家、京都大学経営管理大学院客員教授
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貨幣の時代、金融の主役は銀行でした。しかし、その主役が交代する可能性があるということです。アメリカの銀行は、そのことに気づき始めているのだと思います。例えば投資銀行で世界に知られたゴールドマン・サックスは、500人いた現物株式部門のトレーダーの9割を解雇し、数人のエンジニアに置き換えてしまいました。

アップルと手を組むゴールドマン・サックス

そして、先の「アップルカード」にはゴールドマン・サックスの名前が印字されています。裏側のシステムを手がけているのは、実はゴールドマン・サックスなのです。アップルと手を組んだのです。一方で、アマゾンの小売業者へのローンをゴールドマン・サックスは支援すると報道されていて、テクノロジー会社と全方位で提携していこうという姿勢が見られます。

ほかにも、ITの巨人たちと、アメリカの金融機関は次々に提携を始めています。シティバンクはグーグルと手を組むという報道がありました。

この先、銀行のみならず、証券、保険領域も合わせ、決済から何からすべてをITがのみ込んでいく可能性が十分にあると思います。

今、世界を眺めてみると、勝っているのはプラットフォームを手にしている企業群です。そうでなければ、そのプラットフォームを使わせてもらう側になるか、下請けに甘んじるしかない。

それを考えれば、今からでもプラットフォームを作るべきであり、最も利益が取れる場所を目指すべきだと思います。

一方でもう1つの選択肢は、これからプラットフォームになりそうなベンチャーを買収することです。すべてを自分たちで作り出さなければいけないわけではありません。日本企業は内製にこだわりすぎるところがあるのですが、必ずしもその必要はないのです。

キャパシティー(容量)とケイパビリティー(能力)という議論があります。大企業にはもちろん、ゼロから開発できるだけの能力があります。しかし、人材を手当てしたり、社内で決裁を取ったりといった動きをしているうちに時間(容量)を費やしてしまいます。

それなら、すでに技術を持っている会社(能力)を買収してしまえばいいのです。そうすることによって時間が買える。結果的に有意義な戦略になることが少なくありません。

先がどうなるかわからず、変化も加速度的に速くなっていく2020年以降は、企業として生きるか死ぬかの瀬戸際につねにいるということを認識しておく必要があります。そのために時間を買うのだ、という感覚でしょうか。

私は、この新型コロナの影響で日本企業の海外新規事業への投資が止まってしまうことを懸念しています。リーマンショックで海外新規投資を中断して、人工知能やデータ関連事業で日本企業は大きな後れを取りました。同じ過ちを繰り返している場合ではないと思っています。

日本企業の多くには、まだ幸いなことにキャッシュがあります。このキャッシュを使って、時間を買うのが残された数少ない選択肢の1つと私は思っています。これからプラットフォームになりそうなベンチャー、世界一の技術を持っているベンチャーを買収して、未来の本業に取り込んでいくのです。

新型コロナウイルスの世界的な蔓延によって米中の対立が激しさを増していますが、日本企業がまず見ておくべきなのは依然としてシリコンバレーです。新しい技術に伴うビジネスモデルの変化は速いです。その流れに後れを取らないために、技術の最前線であるシリコンバレーの現実を、つねにウォッチしてもらいたいと思います。

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