大作を迅速公開「ソニー・ピクチャーズ」の信念 コロナ禍の劇場救いたいと「若草物語」封切り

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公開を後押ししたのはそれだけではない。ソニー・ピクチャーズのDNAもある。

「ハリウッドのメジャースタジオの中で、ストリーミングの会社を持っていないのはうちだけ(注:ディズニーは「Disney+」、ワーナーは「HBOマックス」、ユニバーサルは「Peacock」、パラマウントは「Pluto TV」といった動画配信会社が系列にある)。アメリカ本社の人間も明確に言っているが、だからこそ映画館ビジネスをきっちりやるんだと。映画館を運営する興行会社が厳しいときには何かできることをやりましょうという決断にもなる」(佐藤氏)

他より決断が早かったおかげで、館数も大きく増やすことができた。当初は全国128館で上映予定だったが、今回の公開決定で倍以上の340館で公開されることとなった。

手を挙げた劇場にはすべて配給する方針

「いわゆるアクション大作ではないため、コロナが拡大する前は150館前後で手堅くやろうと考えていた。しかし、改めて6月12日に公開するとアナウンスしたところ、全国の映画館が手を挙げてくれた。『スパイダーマン』が全国350~360館くらいなので、340館という数字はそれと遜色がない規模で上映することになる。われわれとしても、全国の皆さんに観ていただけるチャンスをいただけた」(佐藤氏)

本来なら同じ地区で営業する映画館が複数あったら、その中の1館を選んでかぶらないないように調整しているというが、劇場を応援する意味も込めて、手を挙げた劇場にはすべて配給する方針を打ち出している。

劇場側にとっても待望の作品となった。TOHOシネマズの近藤部長は「新作公開が少ない中、いち早く公開が決まった『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』にはとても期待をしている。本作を通して、家庭では味わえない映画館ならではの映像体験を楽しんでいただきたい」と、期待を寄せる。

観客からも歓喜の声があがっている。SNSには「少しずつ新作映画の劇場公開が間近に決まってくると、希望の光が差してくる感じ」「グレタ・ガーウィグの若草物語を、映画館再開の1本目にみれたら最高だな。6月は楽しみが増えてきてうれしい」といった声があがっている。

まだまだ集客が厳しい状況だが、本作が映画館に賑わいを取り戻す突破口になるか、注目したい。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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