視界不良の原油相場、1バレル50ドルの「壁」 OPECプラスは原行の大規模な減産を1カ月延長

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今回の減産の延長期間を巡り、中東最大の産油国であるサウジとロシアが綱引きを繰り広げたもようだ。

サウジアラビアにとって約40ドルの原油価格は満足できる水準ではない。なぜなら、サウジにとって財政収支が均衡する原油価格は(財政収支均衡価格)1バレル約80ドルで、足元の原油価格が続くようでは国家財政へのダメージは避けられない。サウジは一時、2020年5~6月の減産幅を2020年末まで延長するように求めたとされる。

これをよしとしなかったのがサウジに次ぐ産油国であるロシアだ。ロシアの財政均衡価格は約40ドルで、ここから一段の上昇を望む必要性は低い。また、原油価格の上昇の度合いによっては、懸念するアメリカのシェールオイルが息を吹き返しかねないという別の事情もある。

カギを握るシェールオイルの生産動向

現在、アメリカの原油生産量は原油価格低迷を受けて1割ほど減少している。EIA(アメリカエネルギー情報局)によると2020年初に日量1290万バレルだった原油生産量は5月末に日量1120万バレルに落ち込んだ。

ダラス連邦準備銀行が2020年4月に公表した資料によれば、シェール企業が新たな抗井を1本作るのに見合う原油価格は1バレル50ドル程度。数年で採掘量が減衰してしまうシェールは、次から次に開発を進めなければ安定的な生産が難しい。そのため、新たな抗井のコストがどれくらいの原油価格なら見合うのかが重要になってくる。

今年3月以降、原油価格の急落を受けてアメリカのシェールオイル企業の採算が悪化し、大きな打撃を受けるとの見方が強まった。だが、「シェール企業は開発生産コストをさらに下げているようだ。考えていたよりもしぶとい」(石油業界関係者)という声も聞かれる。

原油価格がビジネスとして釣り合う水準になればアメリカのシェール企業は躊躇なく増産を始める。そうすると、回復歩調をたどる原油価格は、シェール企業の採算ラインである1バレル50ドルが1つの「壁」になる可能性もある。

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