仕事がつらい人が「今この瞬間」に集中すべき訳

マインドフルネスの「科学的」な根拠

人は普段、「あのとき、なんであんなことを言ったんだろう」「明日の会議の資料を作らなくては」など、過去や未来に注意が向きがちです。ですが、その注意を「今この瞬間」だけに向ける技術は、アテンションマネジメントとも言え、マインドフルネスの状態がもたらすスキルとも言えるでしょう。

「なんとなく効果を感じる」ではない

近年の脳科学の発達により、fMRI(磁気共鳴機能画像法)で活動中の脳をモニターできるようになりました。これらを用いた最新の研究により、マインドフルネスが脳にもたらす影響が次々に明らかになっています。

ハーバード大学の心理学者であるサラ・ラザール准教授が2010年に行った研究によると、1日30分程度のマインドフルネス瞑想を8週間行うことで、「海馬」の灰白質の神経密度が高まっていることがわかりました。海馬は慢性的なストレスによって萎縮することが知られていますが、マインドフルネスの継続によって、この部分の厚みが増したのです。つまり、脳機能的に見てストレス耐性が上がったわけです。

海馬は短期記憶をつかさどる部位であることから、ビジネスの処理能力速度が上がるとも言われています。

また、同准教授の調査によれば、やはり8週間のマインドフルネスの実践で、怒りや不安といった情動をつかさどる「扁桃(へんとう)体」の反応が緩やかになることもわかっています。そのため、感情のコントロールが効きやすくなり、セルフ・マネジメント能力が高まると言われています。

さらに、2014年にカナダのブリティッシュコロンビア大学とドイツのケムニッツ工科大学の科学者チームが行った研究によると、マインドフルネス瞑想を続けることで、「前帯状皮質」が活性化することがわかりました。前帯状皮質は自己抑制能力をつかさどる部位で、集中力を向ける対象を意図的に決めたり、その場にふさわしくない反射的な行動を抑えたりします。研究によると、マインドフルネス瞑想で前帯状皮質が活性化した人は、注意散漫になる原因に気を取られにくいことがわかりました。

前帯状皮質は、過去の経験からの学習をもとに最適な意思決定を下す能力にも関わっています。すなわち、意思決定の質が上がるわけです。

次ページ脳部位に変化が起こることが、科学的な調査で認められている
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