仕事がつらい人が「今この瞬間」に集中すべき訳 マインドフルネスの「科学的」な根拠

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それと同じように、私たち自身の感情や思考が最適化されず、ストレスでイライラして感情が乱れていたり、多すぎるタスクのために思考が散漫になったりすると、身に付けたビジネス・スキルをうまく発揮できません。アプリケーションがうまく作動するかどうかは、実はOSの状態にかかっているのです。

この自身の感情や思考を整えるのが、マインドフルネスなのです。

部下にしっかりと意識を向ける

では、マインドフルネスの導入によって、職場には実際にどんな影響があるでしょうか。

あるコンサルティング会社の人事部のリーダーは、マインドフルネスに取り組んでから、意思決定が良質なものになったと感じていると言います。ワークを通して自己認識力を高めた結果、自身の怒りの着火ポイントに気づいて、感情的に反応せず、冷静にいくつかの選択肢を思い浮かべられるようになったからだそうです。また、感情的な反応を返す機会が減ったことで、部下が萎縮しなくなり、部全体の生産性が上がったと感じています。

クラウドサービスを提供するある企業のリーダーは、それまでは自分がすべてを決める、いわゆる「強いリーダー」でした。しかし、マインドフルネスを実践するようになったことで、部下たちにしっかりと意識を向け、彼らの話に耳を傾けることの重要性に気づいたと言います。その結果、部下たちは率先してイキイキと動くようになったそうです。その方は、自分が判断をしなくても物事が進んでいくことに、よい意味で大きな衝撃を受けたと言います。

『マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる―脳科学×導入企業のデータが証明!』(かんき出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

同社の人事部のリーダーは、マインドフルネスを実践するようになってから、家庭でのいさかいが減り、職場にイライラを持ち込むことが少なくなったそうです。また、生活のベースである家庭が落ち着いたことで、仕事に集中できるようになりました。同時に、部下の状態にもこれまで以上に気を配れるようになったと言います。

検索サイト運営会社の1事業部門を率いる女性は、チームにマインドフルネスを導入しました。その結果、それまでことあるごとにぶつかっていた営業の社員とエンジニアが、お互いを理解しようと歩み寄り、相手の話を聴く姿勢を身に付け始めたと言います。「お互いにプライドを持って全力で仕事をしているからこそ、意見が対立することはしょっちゅうです。でも、言い争いをするのではなく、話し合いをしようという雰囲気ができている。これは大きな前進です」と彼女は語ります。

今のビジネスパーソンに必要なのは、マインドフルネスで「気づきの力」を深めること。そして、OSの状態を知り、自らコントロールできるようにバージョンアップすることです。

これまでのビジネス・スキルが外付けのテクノロジーだとすれば、マインドフルネスは内なるテクノロジー開発。そんなふうに言えるでしょう。

荻野 淳也 マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)代表理事、合同会社Wisdom2.0Japan代表社員

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おぎの じゅんや / Junya Ogino

慶應義塾大学卒。外資系コンサルティング会社やスタートアップ企業のIPO担当やヨガスタジオ運営企業の取締役を経て、2008年起業。2013年からはマインドフルネスを日本の社会、組織のOSとするべくMiLIを設立し、日本の大手企業やリーダーにマインドフルネスベースのリーダーシップや組織開発のプログラムを提供している。2006年から日本におけるマインドフルネスの社会実装を志し、活動している。Googleで開発されたSearch Inside Yourselfの認定講師。

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