積極投資が無駄に?「曲がり角」の鉄道会社経営

コロナ禍後の通勤・通学、観光需要はどうなる

こうした動向は、鉄道会社にとって決してよいことばかりとはいえない。確かに、ラッシュの軽減は通勤客にとってはうれしい。鉄道会社にとっても、車両や人員の配置は、最も利用客が集中する平日朝に対応できるよう整えられているから、それが削減できればありがたい。

もし、利用客が始発から終電まで平均的に鉄道を使うとすれば、車両の数は今の半分で足りると言われている。日中、車両基地で休んでいる車両の多さを見れば、それは実感できる。

その一方で、鉄道は大規模な設備を基礎に運営している装置産業でもある。将来を見据えた難しい舵取りが、今後、求められる。

混雑解消が長年の課題だった

大都市圏、特に首都圏における朝夕ラッシュ時の混雑とその対応は、1950〜60年代の高度経済成長期からずっと、社会の大きな課題であり続けた。国土交通省は毎年、混雑率の発表を続けており、改善を模索している。小池百合子都知事も都知事選の際、「満員電車ゼロ」を重要な公約の1つに掲げたほどである。

小田急電鉄の複々線切り替え工事=2018年3月(撮影:梅谷秀司)

JRや大手民鉄にとっても最重要課題であり、当然、最も積極的に投資が行われてきた分野が通勤輸送の改善である。最近の目立った例としては、2018年3月に完成した、小田急電鉄東北沢―和泉多摩川間の複々線化があるだろう。これにより、最混雑区間(世田谷代田―下北沢間)の平均混雑率は187%(2009年度)から157%(2018年度)へと低下した。また、相模鉄道が進める、JR東日本や、新横浜経由東急との相互直通運転も同様だ。

これが「コロナ後」、利用客数の減少や1日のうちの利用の平準化が起こったとしたらどうか。混雑率はさらに下がるであろうが、「コロナ前」のラッシュのピークに合わせた投資が過剰になるおそれが生じる。設備の遊休化が起こるとすれば、収益の面から大きな問題だ。

各鉄道会社は、近年の少子高齢化、ひいては将来的な労働人口減少、つまりは通勤客の減少を見据えて、長期的な経営計画を策定してきた。その通勤客の減少が、新型コロナウイルス感染症の流行という不測の事態により、急激に発生してしまったのが、2020年初夏の現状だ。一度、大規模な投資を行い「広げてしまった扇」を、急には縮められないのが、線路や駅なくしては運営できない鉄道の宿命である。

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