愛妻弁当を職場にお届け、インド電車の珍商売 ムンバイの「ウエスタンライン」が実施中

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こんなムンバイの近郊列車であるが、ウエスタンラインにはピカピカの新型車両も導入されていた。ドアが開閉され、エアコン、貫通路完備のもので(従来車両は隣の車両に移動できない)、日本の通勤車両と比べても遜色はない。この車両が普及すれば、ムンバイの都市交通はかなり変わるのではないかと期待してしまう。

ウエスタンラインでは12両編成中、ターミナル駅寄りの1車両の3割ほどにロングシートのスペースがある。ここは大きな荷物を持った乗客のスペースになっている。大きなスーツケースを携えてもいいのだろうが、多くは頭の上に載せた農産物などのスペースとして使われている。

「弁当箱」を運ぶサービス

ところがこのスペースに一風変わった注意書きがある。「上り列車は10時から12時まで、下り列車は14時から16時30分まで弁当箱を運びます」というものだ。「この弁当箱とは何のことか、沿線の駅で駅弁でも売るのか?」と考えてしまう。

実は終点のチャーチゲート駅はオフィス街で、多くのサラリーマンが働いていて、郊外に住む家族が昼の弁当を作り、業者が各家庭で弁当をピックアップ、職場まで運んでいるのだ。お弁当箱はそれぞれが自前のバッグに入れられているので、その色やデザインで誰のものかがわかるらしい。

午前11時30分前後、チャーチゲート駅に到着した電車からは、大きな台に載せられた弁当箱を、業者のおじさんが頭に載せてオフィス街へと愛妻弁当を届けに行くのである。

今回インドを旅したのは、新型コロナウイルスの感染者がまだほとんど見られなかった今年2月。現在のインドは感染拡大が止まらないが、コロナが収束して落ち着きを見せたら、また旅をしてみたい。

谷川 一巳 交通ライター

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たにがわ ひとみ / Hitomi Tanigawa

1958年横浜市生まれ。日本大学卒業。旅行会社勤務を経てフリーライターに。雑誌、書籍で世界の公共交通機関や旅行に関して執筆する。国鉄時代に日本の私鉄を含む鉄道すべてに乗車。また、利用した海外の鉄道は40カ国以上の路線に及ぶ。おもな著書に『割引切符でめぐるローカル線の旅』『鉄道で楽しむアジアの旅』『ニッポン 鉄道の旅68選』(以上、平凡社新書)などがある。

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