大ピンチ、JR「3島会社」20年度の鉄道収支予測 3ケースに分けて予測、意外な試算結果も…
新型コロナウイルス感染症の影響でJR旅客6社の業績が大きく落ち込んでいる。緊急事態宣言は5月25日限りで解除されたが、旅客の移動が元どおりになるまでには相当な時間を要するであろう。
JR旅客会社6社は2021年3月期の業績予想を未定としている。新型コロナウイルス感染症の影響がいつまで、どの程度及ぶのかが判明しないからだ。そこで、2020年3月期の決算をもとに3つのケースに分けて2021年3月期の鉄道事業における営業収支の予測を試みた。JR東日本、JR東海、JR西日本については2020年5月29日付記事(赤字転落も?JR本州3社の20年度「鉄道収支予測」)で、試算しており、今回はJR北海道、JR四国、JR九州の「3島会社」について収支の試算を行う。
収支の求め方、そして条件として掲げた3ケースのシナリオについては、本来であれば最初に説明すべきであるが、5月29日付記事ですでに説明しているため、今回は試算結果を先に説明する。3社の試算結果のあとにシナリオを紹介するので、ご関心のある方はぜひお読みいただきたい。
JR北海道の見通しは暗い
鉄道事業において2020年3月期に522億円の営業損失を計上したJR北海道の2021年3月期の営業収支の見通しはとても暗い。営業損失の予想額は最も甘いシナリオ1でも633億円、シナリオ2では745億円、シナリオ3に至っては844億円にも達すると考えられるからだ。
元来JR北海道は鉄道事業で営業利益を生み出せる企業ではない。同社に対して積み立てられた6822億円の経営安定基金の運用収益、それから2200億円の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)特別債券の利息収益で営業損失を補っている。2019年度の補填額は317億円で、両者を合わせた9022億円に対する利回りは3.5%であった。
いま挙げた前提の営業損失を両者でまかなうには、シナリオ1で7.0%、シナリオ2で8.3%、シナリオ3で9.3%であり、市場実勢とあまりにもかけ離れている。2019年度でさえ補填できずに204億円の損失が残ったことを考えると、実質的に国が負担している運用収益、利息収益で2020年度の損失を補う見込みは立たない。
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