赤字転落も?JR本州3社の20年度「鉄道収支予測」 3つのケースに分けて予測、ピンチの会社は…
全国に緊急事態宣言が発出されて不要不急の外出自粛が要請された4月以降、JR旅客会社6社の輸送人員は急激に減少している。特に、各社稼ぎ時のゴールデンウィーク期間の利用状況に至っては前年と比べて8割から9割以上の減少率を記録した。緊急事態宣言は5月25日限りで解除されたが、旅客の移動が元どおりになるまでには相当な時間を要するであろう。JR旅客会社6社の苦難は当分続く。
JR旅客会社6社は2021年3月期の業績予想を未定としている。新型コロナウイルス感染症の影響がいつまで、どの程度及ぶのかが判明しないからだ。そこで、3つのケースに分けて2021年3月期の鉄道事業における営業収支の予測を試みた。求め方、そして条件として掲げた3つケースのシナリオは次のとおりだ。
年間の収入を月別に配分
1)各月の旅客運輸収入の予測
現状を把握し、今後の動向を探るためにJR旅客会社6社の月ごとの旅客運輸収入が必要だが、各社、国ともこのような数値を発表していない。一方で、国土交通省の「鉄道輸送統計調査月報」には過去年度における月ごとの旅客人キロ(輸送人員に平均乗車キロを乗じた数値)が新幹線・在来線の別、さらには定期・定期外の別に公表されており、年間の数値に対する月ごとの比率が求められる。2017年から2019年までの3年間を集計したところ、比率は4月が8.99%、5月が8.38%、6月が7.52%、7月が9.33%、8月が8.83%、9月が7.64%、10月が9.27%、11月が8.52%、12月が7.82%、1月が8.44%、2月が7.33%、3月が7.93%であった。
それから、定期旅客の旅客運輸収入を厳密に試算するために、通勤定期と通学定期との別に求めた。これも鉄道統計年報の2015年度から2017年度までの3年間のデータから算出している。定期旅客における通勤定期と通学定期との比は、JR北海道が67.63対32.37、JR東日本が86.54対13.46、JR東海が81.00対19.00、JR西日本が80.73対19.27、JR四国が55.75対44.25、JR九州が69.44対30.56だ。
2)営業費用の予測
営業費用は毎日一定の金額となるという考えから、各月とも日数に応じた数値を配分している。旅客運輸収入が急減するなかでJR旅客会社6社は営業費用の削減に努めており、可能な範囲で予測した。具体的には次のような考えに基づく。
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