大ピンチ、JR「3島会社」20年度の鉄道収支予測 3ケースに分けて予測、意外な試算結果も…
となると、すべての前提で考えられるのは営業費用に占める固定費の徹底的な削減だ。JR北海道が2019年9月4日に公表した「平成30年度線区別の収支とご利用状況について」に、同社の路線、区間がほぼ利用状況の悪い順に並べられている。これらのうち、旅客人キロを年間の営業キロで除した輸送密度が500人未満の区間は、1カ月や1週間のなかで利用状況の低い日には営業の休止、沿線の理解が得られれば営業の廃止も検討されるであろう。
ちなみに、筆者の試算では根室線富良野―新得間をはじめとする5路線9区間の営業を廃止したとして、減少する営業損失は98億円である。さらに踏み込んで輸送密度1000人未満、ことによると2000人未満にまで対象を広げていく必要があるかもしれない。
もう一つは運賃の改定だ。JR北海道に限らず、このたびの新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言で業績の悪化したJR旅客会社、民鉄に対して必要な施策となる。JR旅客会社や大手民鉄の運賃がヤードスティック方式を用いた総括原価方式によって運賃の上限が決められているのをご存じの方も多いであろう。今回、総括原価は例年とほぼ変わらないなかで各社運賃による旅客運輸収入は大幅に減るから、運賃を上げられる余地は大きくなる。JR北海道は2019年10月に運賃改定を行っているが、再度の改定もありうるかもしれない。
JR四国は資金手当が課題
JR四国に関しては同社の半井真司社長が2020年5月8日に行った記者会見が話題となっている。同日付の日本経済新聞によると、半井社長は「4月の損失を残り11カ月で補えない」と述べ、さらには収入の減少によって6月にも手持ちの資金が底をつくと語ったのだという。
試算結果も半井社長の発言を裏付ける内容となった。4月の営業損失については34億円と見込まれ、言うまでもなく、2019年度は5月以降どの月も営業損失が発生したのであるから、挽回できるはずがない。
問題は6月に手持ちの資金が底をつくという発言だ。JR四国単体の貸借対照表を見ると、2020年3月31日現在で同社の流動資産は287億円あるという。うち、有価証券は67億円、未収金は9億円、現預金は48億円だ。
有価証券、未収金を現金化できないとすると、現預金の48億円で営業費用を支払わなければならない。仮に営業収入が全額現金であったとすると、4月30日現在の現預金の残高は14億円、5月31日の時点ですでに17億円のマイナスだ。ただし、現時点ではJR四国の経営破綻が濃厚という話も聞かないから、有価証券や未収金の一部または全額が現金化できたのかもしれないし、どこかから緊急融資を受けられたのかもしれない。そもそも筆者の見通しが厳しすぎたとも言える。
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