大ピンチ、JR「3島会社」20年度の鉄道収支予測 3ケースに分けて予測、意外な試算結果も…

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今回の試算でJR四国について興味深い結果が得られた。営業損失の予想額は甘めの見通しのシナリオ1で167億円であったいっぽう、より現実的なシナリオ2では73億円と減っているのだ。シナリオ1よりもシナリオ2のほうが営業収支が改善されているのはJR四国だけである。これはもともと旅客運輸収入の減り具合に対して、営業費用を削減した効果のほうが大きいことの表れだと言える。

JR四国もJR北海道と同様に経営安定基金の運用収益と鉄道・運輸機構特別債券の受取利息収益とで営業損失を補って成立する鉄道会社だ。同社に対して積み上げられた金額は前者が2082億円、後者が1400億円の計3482億円で、2019年度は両者を合わせた収益は103億円であったから、利回りは年2.96%だ。いっぽうで、営業損失は131億円であったから、21億円分は補填できなかった。単なる補填であれば利回りは年3.76%、同社を今後も安定して存続させるのであれば利回りは年4%はほしいところだ。

国鉄が分割民営化されたとき、経営安定基金の想定利回りは年7.3%と設定された。ところが、バブル経済崩壊後の低金利により、利回りは年々減少を続け、とうとう半分以下となってしまった。年2.96%でも高い利率と言えるものの、JR四国の営業損失を補えなければ意味はない。この利回りでこの先も進めざるをえないのであれば、経営安定基金をさらに積み上げて4426億円とすべきであろう。原資はどこにもなさそうだが……。

JR九州は訪日客減少が危機拡大

2016年度に大幅な減損処理を行って鉄道事業の収支を黒字化したJR九州は、2017年度から2019年度までの3カ年度においても鉄道事業で営業利益を計上してきた。しかし、そのよい流れも2020年度に途切れてしまいそうだ。

最も見通しの甘いシナリオ1でも、2020年4月に111億円、翌5月に99億円と合わせて210億円の営業損失が見込まれた点が響き、2021年3月期には19億円の営業損失が予想される。営業損失はシナリオ2では214億円、シナリオ3では387億円とさらに膨らんでしまいそうだ。

JR九州はインバウンドの旅客の実数、比率が高いと見込まれる。ということは新型コロナウイルス感染症の影響を長期間受け続ける可能性があり、同社の営業収支に暗い影を落としそうだ。

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