知識の量に比例して人間は考えなくなる--『自分の頭で考える』を書いた外山滋比古氏(英文学者・エッセイスト)に聞く


--日本は、輸入文化にたけてきました。

確かに「周辺文化」だが、元が変わりえない一方で、周辺文化には自由度が大きい。日本が新しい世界文化をつくり出す力には強い可能性がある。実現できれば、日本は文化的先進国になれる。そういう点では学者や思想家、研究者は、ことに文科系はまだ非力だ。知識を代表するのは文科系の研究者や思想家であり、自分の考えをつくるには知識を超えることが必要だ。

いまヨーロッパも苦しんでいる。近代文化の終わりだからだ。新しい時代の入り口のところで、長い伝統のある国々はなかなか脱却できないが、伝統がなくて借り物が多い日本は、恵まれた状況にある。世界に向けて「新しい文化」を発信していく。経済で物を輸出するということは実は大したことではない。新しい理念とか、新しい観念とか、新しい思想こそ輸出することだ。

--日本語の壁はありませんか。

当面は外国語を使わざるをえない。たとえばある時期のソ連において、心理学もそうだったが、文科系の学問でオリジナルなものが相次ぎ発表され、それを知りたいがため、ロシア語を勉強しようとする人がかなりいた。日本でオリジナルなすぐれたものが出てくれば、世界中の関心のある人は知りたくなる。文化に力があれば、自然と日本語も国際的になる。
 
(聞き手:塚田紀史 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済)

とやま・しげひこ
1923年愛知県生まれ。東京文理科大学英文科卒業。雑誌『英語青年』編集長、東京教育大学助教授、お茶の水女子大学教授、昭和女子大学教授などを歴任。専攻の英文学にとどまらず、レトリック、テクスト、日本語、エディターシップ、教育、古典などで、独創的な著作活動を続けている。

『自分の頭で考える』  中央公論新社 1470円

    

  
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