「ごくせん」「野ブタ」人気に見えたテレビの矛盾 10年以上前の再放送ドラマが活況呈す5つの訳

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さらにその理由を挙げる記事が何本か報じられたことで、「再放送はすべての関係者から承諾が必要」「番宣絡みなどのメリットがなければ承諾が得られにくい」「現在では放送しづらいシーンや出演者がいる」「広告収入が抑えられる」などの事情を知る人が増えました。だからこそネット上に、ひと昔前のドラマを再放送にこぎつけたテレビ局の努力を称えるコメントが見られるようになったのでしょう。

しかし、制作者という立場で見ると、「ひと昔前に放送されたドラマの再放送を実現させる」という仕事は、努力の方向性として微妙。彼らの本心は、「新たなドラマにもっと努力を重ねて感動させたい」のであって、視聴者としてもそれを望んでいるでしょう。

テレビ東京がLINEアカウントで「もう一度見たい深夜ドラマ」のアンケートを行い、「最も熱いリクエストがあった」として、現在「勇者ヨシヒコと魔王の城」(2011年)の再放送をしています。このアンケートはわずか5日で約3万9000人からの回答があったそうですから、「いかに再放送が見たいドラマがあるか」がわかるのではないでしょうか。

再放送は「努力の方向性」として微妙

もしテレビ東京以上に人気作の多い他局が同様のアンケートを行った場合、10年以上前のドラマが次々に挙げられていくことが予想されます。前述したように許諾などの理由から必ずしもアンケート1位の作品を再放送できるわけではないものの、視聴者から見て大切なのは「実現に向けて努力をしたこと」。そのような努力の跡が見えにくく、一方で「自局の番宣や一部芸能事務所への忖度ばかりが見えるため、不満が募りやすい」とも言えるでしょう。

テレビ局にとって過去に放送されたドラマは貴重な財産。それを単にCSや動画配信サービスなどの有料コンテンツとして放送・配信するだけでなく、地上波でもどう発信していくのか。奇しくもコロナ禍によって、ひと昔前のドラマに対するニーズが明らかになっただけに、活用方法の再考、収益化、許諾作業のシステム化などに取り組むべきなのかもしれません。

ひいてはそれがドラマはもちろん、テレビそのものへのイメージアップにつながり、新作ドラマへの視聴者誘引にもつながるでしょう。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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