コロナ禍で地銀の業績はどれだけ悪化するのか 多くが減益見通しだが、下方修正リスクは残る

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その手法をとったのが、横浜銀行を傘下に持つコンコルディア・フィナンシャルグループだ。2020年3月期は傘下2行(横浜銀行、東日本銀行)合わせて195億円程度の与信費用を計画していたが、コロナ影響から約50億円を予防的に引き当てたため、最終的な与信費用は245億円となった。

2021年3月期の与信費用は212億円を見込む。東日本銀行の引当基準を厳格化した影響がなくなり総額は減少するが、その要因を除けば前期よりも多い与信費用を見込んでいる。地銀全体を見ても、前期を上回る与信費用を見込んで今期は減益予想を出しているところが多い。

日本銀行が発表した4月の貸出・預金動向によれば、全国の銀行と信用金庫の貸出残高は前年同月比3%増の約553兆円だった。3月までは2%程度の伸び率だったとから、積極的に資金繰り支援をしていることがわかる。緊急事態宣言後にはその対応が加速しており、今後も貸出の伸び率は高い水準になりそうだ。

コロナが長引けば耐性を問われる

銀行全体でもみても、新規の融資だけでなく、既存の融資に対する条件変更にも積極的だ。金融庁の発表によれば2020年4月末までに条件変更に応じた割合は99.8%(審査中を除く比率)と非常に高い。

足元では緊急事態宣言が解除され、経済活動に再開の兆しも見えている。だが、第二波の到来となれば、さまざまな業界の事業環境が再び悪化し、地銀の与信費用も増加を余儀なくされる。

ある上位地銀の財務担当者は、「(業績予想の作成で)もっと多くの与信費用の計上を検討していたが、営業担当者と話をすると『自分たちは倒産を防ぐために企業を支えているんだ』と反発され、結局、大きな額は見込まなかった」と漏らす。対外的な数字の出し方は、銀行ごとの違いだけでなく、銀行内部でも意見がわかれるようだ。

ふくおかFGのように将来リスクを最大限取り込んでいなければ、コロナ影響が長引いた場合、地銀の業績に下方修正リスクが高まる。それだけに、地銀の業績見通しはまだまだ変動しそうだ。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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