意外?在来線より「新幹線のほうが安い区間」5選 一見「おトク」の背景には並行在来線問題も

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盛岡―新青森間は、盛岡から途中の目時(青森県)までの82.0kmがいわて銀河鉄道で2420円、目時から青森までの121.9kmは青い森鉄道で3170円、青森から新青森までの3.9kmはJRで190円、合計5780円となる。もし全区間がJRなら207.8kmで3740円であり、並行在来線分離によって約2000円も高くなっている。

盛岡―新青森間は、並行在来線の運賃が高いため新幹線利用よりも高くなる。全線がJRの運賃なら新幹線より安い(筆者作図を基に編集部作成)

これに対して東北新幹線は乗車券3080円、座席未指定の空席を利用できる特定特急券2640円の合計5720円。なんと60円安いうえに所要時間も約3時間短縮される! おトクなような、なんだか騙されたような……。新幹線開業の裏で素直に喜べない並行在来線問題の闇である。

ちなみに盛岡―青森間で比べると在来線5590円、新幹線6050円。差額460円だが、所要時間は約2時間45分もの短縮が可能だ。

七戸十和田―新青森間

七戸十和田(青森県)―新青森間は在来線で直行できず、バス利用になる。七戸十和田から新青森までは十和田観光電鉄バスで2100円だ。

一方、東北新幹線だと乗車券860円、特定特急券880円の合計1740円。360円安く、約45分速い。七戸十和田―青森間もバス1810円、新幹線1740円と、新幹線の方が70円安い。

並行在来線問題を考えるきっかけに

番外編:小浜―京都間

最後に、将来的に新幹線が開業すれば在来線より新幹線のほうが大幅に安くなりそうな区間を紹介する。北陸新幹線の小浜(福井県)―京都間だ。この区間は湖西線と小浜線経由で143.6km、JR運賃で2640円となる。第三セクターへ転換されればもっと高くなるかもしれない。

一方、新幹線はだいたい55kmくらいの距離になるとみられ、この距離なら開業までに消費税が上がったり廃止になったりしない限り乗車券は990円になると考えられる。これに特急料金870円を加えても1860円となり、在来線より780円も安いうえに、所要時間はおそらく約2時間40分もの短縮になるだろう。在来線が三セク化されれば、差は1000円程度に開くかもしれない。

いかがだったであろうか。今回は新幹線を使ったほうが在来線より安くておトクな区間を紹介したが、運賃・料金について考えることは、同時に並行在来線問題について考えるきっかけにもなる。今、佐賀県が主に並行在来線問題を理由に長崎新幹線(九州新幹線西九州ルート)フル規格の整備を頑なに拒否しているのもわからなくもないとも思えるのではないか。一方でこのまま折れなければ、長崎県が見込みどおりの投資効果が得られなくなるとして、佐賀県に対して訴訟を起こしてもおかしくないぐらいの案件だとも筆者は思うのだが、やはり佐賀県からしたら厳しいところである。さて、皆さんはどう思われるだろうか。

北村 幸太郎 鉄道ジャーナリスト

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きたむら こうたろう / Koutaro Kitamura

1989年東京生まれ。2008年昭和鉄道高等学校運輸科卒業、2012年日本大学理工学部社会交通工学科マネジメントコース卒業。乗り鉄、ダイヤ鉄。学生時代は株式会社ライトレールにインターン生として同社の阿部等社長のもと、同社主催の「交通ビジネス塾」運営などに参加。

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