コロナ禍で露呈!「名ばかり共働き」世帯の現実 フルキャリ活かす「共働き2.0」社会の実現へ
実際、野村総合研究所が3月末に実施した調査では、「家事の量や頻度が増えた」とする夫は24.5%、「育児の量や頻度が増えた」とする夫は27.7%にとどまりました。3月初めに学校が臨時休校なり、すでに家事や育児の負担が急増していたと思われるにもかかわらず、男性の4人に3人は家事や育児の量が変わっていませんでした。
配偶者の家事や育児の量や頻度が増えたかについての共働きの妻の回答も、「配偶者(夫)の家事の量や頻度が増えた」とする妻は15.0%、「配偶者(夫)の育児の量や頻度が増えた」とする妻は21.0%にとどまりました。臨時休校などにより急増した家事・育児の多くは女性が担った様子がうかがえました。
今や専業主婦世帯数を共働き世帯数が上回り、夫婦がともに働くことが珍しくはありません。共働きが当たり前になっても、本当に支え合う態勢がとれている共働き夫婦はどのくらいいたのか、また自分のところはどうだったのか、共働きといっても「名ばかり共働き」ではなかったのかを改めて問うことになったのが、このコロナ禍だったのではないでしょうか。
筆者は従来から、働く人の中に増えている、出産や子育てにも前向きでありながら仕事やキャリア形成にも意欲的に取り組みたいと考えている「フルキャリ」の存在に注目してきました。2015年、キャリア重視の「バリキャリ」とも、私生活重視の「ゆるキャリ」とも異なる、両者の価値観を併せ持つような働き手を「フルキャリ」と定義しました。筆者が実施した調査によると、正社員として働く女性の2人に1人(50.3%)が「フルキャリ」であることが分かりました。
先ほど、新型コロナウイルス感染拡大が「名ばかり共働き」を直撃し、家事や育児の負担の偏りを改めて明らかにすることにつながったと述べましたが、子育て中の「フルキャリ」もこのコロナショックに見舞われています。
「フルキャリ」が直面するコロナショック
子育て中の「フルキャリ」で、新型コロナウイルス感染拡大に伴い在宅勤務となった人の中には、臨時休校・臨時休園という事態も重なって、「子どもの世話をしながら働く在宅勤務」というかなり特殊な環境下での就業を余儀なくされた人が多くいたと思います。野村総合研究所が5月末に実施した調査では、小学生以下の子どもと同居している女性で在宅勤務をした女性の71.0%が「子どもの世話や勉強を見ながら仕事をした」と回答しています。
子育てをしつつも、仕事での貢献も大事にしてきた「フルキャリ」だからこそ、この「子どもの世話をしながら働く在宅勤務」で、いつも以上に思うように仕事ができず、いつも以上に貢献実感を持ちにくい状況に追い込まれている様子がうかがえました。制約なく在宅勤務をする(外部からはそのように見える)同僚と比べてしまい、子育てと仕事の両立の難しさを改めて痛感してしまった人も少なくないようです。
ここ数年、子育てしながらであっても仕事も頑張りたいとする「フルキャリ」の存在を認識し、子育て期であっても活躍を引き出そうとする企業も増えてきていました。そのような環境がもっと増えて、「フルキャリ」が「フルキャリ」のままキャリアを重ねていくことができれば、本人のみならず、限られた人的資源で成長を達成する必要に迫られた企業にとっても大きなメリットがあると考えてきました。
そのさなか、一時的とはいえ、急に「子どもの世話をしながら働く在宅勤務」が始まり、かつ長く続いたことで、子育て期であっても「フルキャリ」を目指そうとする人が、これまでの何倍以上にも困難や葛藤を感じる事態を引き起こしてしまっています。これが「フルキャリ」を襲うコロナショックです。
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