「逃げ恥」の新垣結衣、何度見ても飽きない魅力 再放送の特別編がこれだけの人気を保つ理由

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特別編の第1話を見て感じたのは、新垣結衣の存在感だった。もちろん、星野源も魅力的なのだが、やっぱり新垣結衣。それは彼女のこの3年間の露出度によるものではないだろうか。新垣結衣がこの1年、新作映画やドラマに出ていなかったことがいい方向に作用したと思う。

人気俳優は年間、映画やドラマや舞台、CM等でいろいろな顔を見せるもの。とりわけ俳優は、いろいろな役を演じるスキルが重要なので、多彩な役に挑戦して、イメージをどんどん更新していく。それはいいことである反面、番組の再放送を見たとき、その役はすでに通り過ぎたものとして距離を感じることがある。こんな役をやっていたよねという懐かしさや、俳優の成長や変化に対する感慨などが手伝って、物語に埋没できなくなる。何度も見ていると余計に。ところが、「逃げ恥」の新垣結衣が演じる森山みくりは何も変わらず画面の向こうに存在していて、まっさらな気持ちでまた見ることができた。

何もやっていなくはないがイメージが冷凍保存

そうはいっても、新垣結衣が「逃げ恥」の後に何もやっていないわけではない。映画「ミックス。」(2017年)、「コードブルー ―ドクターヘリ緊急救命―」(2018年)、スペシャルドラマ「絆〜走れ奇跡の子馬〜」(2017年)、連ドラ「獣になれない私たち」(2018年)といくつも出演している。

卓球選手、フライトドクター、競走馬の育成者、IT企業社員……どれも清潔感があって健気な役が多いのだが、「獣になれない〜」ではいつもの透明感をややくすぶらせた感じの役に挑んでいた。また2019年にはファッション誌「NYLON JAPAN」で金髪になったことが話題になったり、最近も同じく「NYLON〜」で真っ赤な口紅で強い表情をしている写真を披露したりしていて、森山みくり=新垣結衣ではないことは重々わかるのだが。2019年はドラマにも映画にも新作がなかったことによって、「逃げ恥」の森山みくりのイメージがそのまま冷凍保存されたかのようになって、“物語”にとっては理想的だったと思う。

再放送の人気を見ていると、名作は何回見ても色褪せないことがわかる(写真:(C)TBS)

1話のみくりは、白いブラウスを着てオフィスに存在し、エプロンをかけてスマイルマークのスリッパを履いて部屋を掃除する。さらっさらのボブ、卵のようとは彼女を表す言葉だと思うような面長の輪郭、つるっとした肌、黒目がちの濁りのない大きな瞳、ささやくような声。こんな人が家にいてせっせと家事をやってくれていたらいいなあ〜という理想オブ理想。平匡が熱を出して倒れて、カップのアイスを買ってきてほしいと頼むとちゃんとバニラとチョコの2種類を買ってくる気の利くところなども好感度が高い。

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