渋沢栄一が「自分の未来に悩む30代」に贈る言葉 折れそうな心を支え続ける「大丈夫の試金石」

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それでも渋沢栄一は、未来を信じる力を失いませんでした。それは、日本が欧米列強に伍していくうえで必要なのは外交でも軍事力でもなく、合本主義のもと民の力を結束させれば十分に実現可能だという信念によって支えられたのだと思います。

日本という国を豊かにしたい、欧米列強に伍していけるように競争力を高めたいという一念が、いくつもの「日本初」を含め、500社ほどの会社を設立する原動力になったのです。

ミレニアル世代が停滞ムードを吹き飛ばす

渋沢栄一が大いなる希望を抱いて官から民に転じたのは、33歳のときです。いまの30歳前後といえば、ちょうど「ミレニアル世代」に当たります。大学を卒業して10年ほどで、年齢的にも、能力的にも、これからの日本企業、そして日本の社会を創っていく主役となる世代です。

私はいま59歳で、30代の方たちから見ればひと昔前の人間になりました。私が30代だったときは、バブル経済は崩壊していましたが、自分がどれだけ出世できるのか、どれだけ金持ちになれるのかということの余波がいまだに残っていました。私が当時勤めていた外資系金融機関だけでなく、日本社会が全体的にそうだったと思います。

しかし、ミレニアル世代はそれとはかなり違うことを、その世代の人たちと普段接することで感じています。具体的に申し上げると、自分の利益を優先する前に、社会的課題の解決に向けてアクションを起こしたいと考えている30代が大勢いるように思えるのです。

日本は、バブル経済の崩壊によって「失われた20年」とも言われる長期の低迷を経験し、その間に人口減少社会に転じました。しかも、新型コロナウイルスの世界的な蔓延で、日本だけでなく、世界中の経済が先行き不透明になっています。

いま、渋沢栄一が活躍した時代と同じように先が読めない、難しい時代に入っていますが、大変革の時代には、若い人が活躍するチャンスが訪れます。現状を嘆いて立ち止まってしまうのはもったいない。渋沢栄一のように未来を信じる気持ちを強く持てば、あなたの夢を実現するための道が開け、きっといまの停滞ムードを吹き飛ばせるはずです。

渋澤 健 シブサワ・アンド・カンパニー代表取締役、コモンズ投信会長

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しぶさわけん / Ken Shibusawa

国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。

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