公的資金制度が消滅戦略的活用に向け制度の期限延長を
この1カ月ほど、ある事柄がにわかにマスコミをにぎわせ始めている。一部の信用組合に対する資本支援策だ。信用組合の上部組織である全国信用組合連合会(全信組連)が、自己資本比率の低下した傘下組合の優先出資証券を引き受ける方式で資本支援することになった。今のところ、全信組連による資本支援の対象は6信組だという。
結構な話だが、十分に予想されたことでもあった。不良債権処理の重みで過小資本化した金融機関を放置しておくことは得策ではない。
地域金融機関対象の予防的な公的資金注入制度である「金融機能強化法」は今年3月末で期限を迎え、公的支援はなくなる。ところが過小資本の金融機関は依然として存在していた。自己資本の健全性の回復は十分でないのだ。
ここで再確認しておかねばなるまい。今回の全信組連による資本支援の実施だけで、金融業界の中で近未来を懸念せざるをえないような金融機関を一掃できるのか。
残念なことに、景況は下振れリスクが歴然としてきた。構造問題として地方の衰退は著しい。全国各地で過疎化が進展中だ。都市部でも輸出型の大企業は隆々としていても、内需型企業や中小零細企業の実情は厳しい。実体経済は金融機関の資産状況に反映する。
金融機関の社会的役割
とはいえ、金融業界だけが公的に救済されることは不公平という議論はつねにある。正論だ。間違っても、金融機関優遇という観点で政策が打ち出されてはいけない。金融機関は自らの努力で経営の健全性を維持することが、強く求められている。
そのことを前提として言えば、金融機関は自己資本上の健全性を失うと、期待された社会的役割を果たせなくなる。一般的に企業経営に当てはまるメカニズムだが、中でも金融機関は自己資本比率規制という公的枠組みの下で、このメカニズムが明確に働く。欧米銀行のような信用収縮の悪循環を引き起こしかねない。