腕時計端末のトップ企業、ぺブルはどこへ? 発展を続けるスマートウォッチ開拓者の生態系

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ウェアラブルの歴史は決して浅いものではない。過去には、IBMが2001年にウォッチパッドを販売していたし 、マイクロソフトや旧ソニーエリクソンもスマートウォッチを手掛けたが、いずれも短命だった。ぺブルはこれまでの会社と何が違っていたのだろうか。

まず開発のプロセスが違っていた。クラウドファンディングを行う際、ミンコフスキーは潜在的なユーザーに向けて、開発の進捗状況をビデオで頻繁に知らせている。製品開発の様子を公開することで得られる市場からのフィードバックを開発に結び付けたわけだ。最初に売り出された150ドルから、現在では、229ドル、249ドルを加えた3モデルとした点も、特徴だ。また、USBケーブルを繋げたり、ポケットやバッグからスマホを取り出したりしなくても、新着のメールをぺブルの表示盤から確認できるようにした。

汎用性も大きな特徴だ。ぺブルはアップルのiOSやグーグルのアンドロイドに対応。スマホの機能や、お気に入りのアプリと連動するように設定できる。音楽再生の操作をしたり、簡単なゲームも楽しむこともできる。時計表示のデザインも変えることが可能だ。軽くて使い勝手が良く、ディスプレイにはシャープ製のメモリ液晶を採用し、太陽光の下でも鮮明に文字を判読できる。 防水仕様のため食器を洗う時や水泳の際にも時計を外す必要がない。毎日充電しなければならないスマホと違い、5日間は充電しなくても済む。つまり、なかなかの優れものなのだ。

自動車メーカーと提携?

日本を2回訪問したという

ペブル周辺には新しいアプリが続々と登場している。自転車を多くの人がシェアをし、利用時間に応じて料金を払う新サービスがサンフランシスコやサンノゼにあるが、 この自転車が置いてある場所を知らせるアプリも開発された。

水泳中のラップ数やストロークの回数を教えるアプリのベータ版もある。近距離無線通信規格のブルートゥース(Bluetooth)で心拍数をモニターしたり、小型のGPSの機能を持たせることも検討中。外観のデザインについても、さらに見栄えのするものに進化する予定だ。これらは年初にミンコフスキーや同社のエンジニアが明かした。

イベント終了後、ミンコフスキーに日本市場への取り組みについて話を聞くことができた。ただし「すでに2度、日本に行った」と話をするだけで詳細の説明は避けた。「業務提携交渉については今の段階では話をすることができない 」との理由からだ。

いったいどのような企業とどのような交渉を行っているのだろうか。考えられるのは自動車メーカーとの協業だ。すでにぺブルには、欧州の自動車メーカーが本体右側にある3つのボタンでダッシュボードのシステムを操作し、バイブレーション機能を使うことで安全運転をサポートする使用方法を提案しており、提携となればこうした使い方が有力だろう。間違いなく言えるのは、ぺブルは次のステップへ向けて準備を進めている、ということだ。(敬称略)

Ayako Jacobsson ジャーナリスト

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アヤコ・ジェイコブソン / Ayako Jacobsson

山口県徳山市生まれ、広島市で育つ。東京都立大学(現首都大学東京)法学部卒業、英ケンブリッジ大学、コロラド大学ボルダー校で学ぶ。在学中、AP通信東京支局で編集アシスタント、卒業後はビジネステレビのディレクターとして「ウォール・ストリート・ジャーナルを読む」「製造物責任法」等を担当。その後、読売新聞英字新聞記者として、通信、テレビ、映画、ホテルなどの業界を取材した。ペルーのフジモリ元大統領へのインタビューも行った。1999年頃からシリコンバレーに拠点を置き、取材・執筆活動を行っている。

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