ソフトバンクG、あえて「無配」を示唆した理由 ウィーワークやウーバー評価損で1兆円赤字
「万が一、資金がさらに必要にならないとも限らないので、配当については未定。未定ということはゼロ配当もありうる。増配はあまり考えられない。従来の配当からゼロのどこかで落ち着く」
5月18日、2020年3月期の決算会見に臨んだソフトバンクグループの孫正義会長兼社長の表情は、いつになく神妙だった。
ビジョンファンドが足を引っ張る
同社の2020年3月期決算は営業利益が1兆3646億円(前期は2兆0736億円の黒字、継続事業のみの数値)、親会社に帰属する当期利益は9615億円(同1兆4111億円の黒字)と、ともに赤字に沈んだ。
事業セグメント別にみると、国内通信・EC(電子商取引)は堅調だったが、投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」をはじめとするファンド事業が1兆9313億円の赤字(前期は1兆2566億円の黒字)に転落し、大きく足を引っ張った。SVFの不振は、シェアオフィス運営のウィー・カンパニーやライドシェアのウーバー・テクノロジーの株で大きな評価損を計上したためだ。
巨額の赤字を計上したとはいえ、赤字の主因は株の評価損であり、多額のキャッシュが流出しているわけではない。本業が稼ぎ出す営業キャッシュフローは2020年3月期、2019年3月期とも約1.1兆円にのぼる。その大半は国内通信子会社のソフトバンクが稼ぎ出したものだ。
そして、配当は期初に予定した通り、1株あたり44円の配当を実施する。配当総額は910億円。孫社長の好きな言葉でなぞらえれば、「1丁(兆)、2丁(兆)と豆腐のように」、兆単位の損益を計上するソフトバンクGにとって、900億円台の配当総額は誤差の範囲に過ぎない。
足元のキャッシュフローは潤沢で、2020年3月期並みの配当をしても支障はないように思える。では孫社長はなぜ、2021年3月期の配当予想を「未定」とし、会見でもあえて無配の可能性に言及したのだろうか。
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