ソフトバンクG、あえて「無配」を示唆した理由 ウィーワークやウーバー評価損で1兆円赤字

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ソフトバンクGが2020年3月末時点で保有する現金・現金同等物は約3.3兆円。これに対し、向こう2年以内に償還が必要となる社債は1.8兆円で、国内通信子会社のソフトバンクが毎期1兆円の営業CFを安定的に稼ぎ出していることも加味すると、資金繰りには余裕があることがわかる。

想定外の支出もなさそうだ。SVFの投資先88社のうち「15社が倒産する」(孫社長)とする一方、「救済はしない」(同)ため、投資先を救済するために資金をつぎ込む可能性は低い。さらに、SVF1号の投資成績は累計でマイナスに転じている。2019年から始めた2号ファンドは「不人気」(同)なため、投資はソフトバンクGの資金のみで慎重に行うとしており、SVF絡みで巨額の資金が流出するとは考えにくい。

記者会見で明らかになった新事実

ソフトバンクGは2020年3月に、最大4.5兆円の資産売却と1年以内に総額2.5兆円の自己株買いを行うことを明らかにした。発表時点で発行済株式の半分弱、45%相当を買い入れる大胆な計画だ。

理論的には、発行済株数が約半分になれば株価は約2倍になる。実際に株式市場は巨額の自己株買いのニュースを織り込み、ソフトバンクGの株価は3月23日午後の発表直前の場中安値2652円を底にして、4000円台を回復した。

自己株買いも配当も、株主還元という点では同じだ。自社株を2.5兆円も買い入れ、実際に株価も上昇した。したがって、総額900億円程度の配当にこだわる必要はない。孫社長はそう考えたのかもしれない。

5月18日の会見ではいくつかの新事実も明らかになった。1つは、資金繰り対策の一環として、虎の子であるアリババ株を実質的に売却していたことだ。会社側は正確な数値を開示していないが、約15兆円保有するアリババ株の1割弱を4月と5月に売却した。具体的には、「先渡契約」「フロア契約」「カラー契約」という3つの先渡売買契約を用いて、1兆2500億円を調達していた。

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