ソフトバンクG、あえて「無配」を示唆した理由 ウィーワークやウーバー評価損で1兆円赤字

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決算と同じ18日には新たな取締役人事を発表した。社外取締役候補としてベンチャーキャピタリストのリッププー・タン氏、早稲田大学教授の川本裕子氏を挙げた。三井物産会長の飯島彰己氏、東大教授の松尾豊氏と合わせて、これでソフトバンクGの社外取締役は4人になる。会社側は「いずれも当社の判断により実施しているもの」とエリオットの影は薄いことを強調する。

一方で、アリババ創業者のユン(通称ジャック)・マー氏が6月25日付で退任する。アリババは近年、ソフトバンクGやSVFの投資先と利害が対立するなどの問題が指摘されていた。例えば自動運転では、アリババが出資するオートXとSBGの出資するディディとが競合関係にある。ガバナンスの改善という観点からすれば、マー氏の退任もエリオットを満足させるものに違いない。

ただ、エリオットの3つの要求のうち、投資先の実態などのSVFの透明性向上については進展がみられない。2020年2月から上場会社の企業価値の変動を開示するようになったが、未上場投資先の企業価値の実態についてはよくわからない。

投資先の15社が倒産する

18日の会見でも孫社長の説明は「15社が倒産し、15社がコロナの谷を飛んでいって成功する。残りの60社弱はまあまあの状況になるのではないか」「残りの60社はまあまあというのは、優先出資のSVFの投資家に年固定7%を払える程度」というにとどまった。

エリオットとのエンゲージメント(企業価値向上などの目的を持った対話)の中で、今回大きな進展がなかったSVFの透明性向上は今後強く求められていくだろう。それにどう応えていくのか。

会社側は「ステークホルダーへの影響度合いを慎重に検討し、必要に応じて主体的な開示を行っている。SVF事業の開示については従前より継続的に改善を行っており、今回も必要に応じて加えている。ただ、特定の投資家だけを意識した取り組みではない」としている。孫社長にとって、新型コロナウイルス問題や巨額の赤字よりも、SVFの透明性向上はもっとも頭の痛い問題に違いない。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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