北海道新幹線vs.JR貨物「青函共用問題」の核心 一時は貨物が青函から撤退、船舶輸送構想も
この青函問題において、もう一点の注目点になっていたのは、貨物列車が青函間から消えることにより可能になる新幹線の時間短縮時分である。以前から大きな目標として「東京ー札幌間4時間半」があったが、2019年夏に報道されるまで青函間の短縮時分は公表されていなかった。だが、8月の報道でそれは16分と想定していたことが明らかになった。すると16分の短縮と480万トンを輸送する鉄道貨物ネットワークの寸断を天秤にかけた議論となる。
新幹線の高速化は望まれるが、北海道新幹線の全列車がノンストップ運転を行って東京ー札幌間4時間半とするものではない。途中駅に停車する列車も必要であり、すると4時間半運転は日にわずか数本の列車だけが該当することになるだろう。その看板を掛けるために、すべての貨物列車をなくして物流にダメージを与えてまで大転換を図ることを、社会は受け入れるのかどうか。
こうした経緯から、以後、共用走行を前提として一部時間帯の高速化を図る場合の新幹線と貨物の共存がテーマとなり、JR貨物やJR北海道でダイヤが検討された。高速の新幹線列車が効果的にニーズを得られる時間帯をにらみながら、青函の通過時間帯にさまざまなバリエーションを持たせて、どの程度の列車が運行可能かを試算している。
立ちはだかる並行在来線問題
現在の北海道新幹線は定期列車13往復であるが、札幌延伸となれば20往復程度にはなるであろう。一方の貨物列車は定期列車20往復に、時期に応じた臨時列車が必要になる。そうした前提を作って煮詰めてゆくと、青函区間に高速化列車を走らせるために時間帯区分を設けたとしても、ある程度の列車は運行可能であることが見えてきた。
ただしその場合、速い新幹線列車と時速160kmの列車では速い列車に乗客が集中しがちなこと、一方の貨物列車のダイヤを多少前後にずらす必要があることから、リードタイムが明らかに悪くなるといった課題は生じる。すると機関車やコンテナ車を増やさなければならないことや、列車ダイヤが込んでいる本州側では待避線の増強等のインフラ投資も新たに必要になってくる。
このように青函間の貨物列車は残る方向となり、新幹線列車とのダイヤ調整も課題はあるものの可能であることがわかってきた。しかし、それを解決すればすむ話ではないのが並行在来線の問題である。そして、この並行在来線こそが北海道新幹線と物流の関係の核心である。
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