北海道新幹線vs.JR貨物「青函共用問題」の核心 一時は貨物が青函から撤退、船舶輸送構想も

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そして北海道新幹線に関してはもう一つ、大きな問題が横たわっている。整備新幹線であるところの北海道新幹線は、事業着手の前提条件として並行在来線である函館本線函館ー小樽間のJR北海道からの経営分離が、地元と合意されている。これまでの並行在来線は、特殊条件だった横川ー軽井沢間を除けば第三セクター会社が設立され、地元の手により線路は維持されている。

ところが今般の例は、現状の特急旅客が新幹線に移った後の地域内の輸送需要はきわめて細く、それだけに地元の力で並行在来線を維持することは困難視されている。仮に在来線廃止となった場合、当然ながら貨物列車の運行ができなくなる。ある意味「わかりきった」この問題が立ちはだかるため、各種の方策が検討される青函走行のテクニカルな問題に対して、並行在来線問題は現在に至るまで具体的な協議に入れていない。この問題に結論を出し、実行に移さなければならないとなると、「10年」は目前とも言えるほど短い。

こうした状況下で事態はどう動いているのだろう。

北海道・本州間の貨物輸送がすべて船に?

2019年3月、北海道新聞(道新)は「青函貨物海上転換も」と報じた。共用走行区間で新幹線列車の高速化を実現するため、国土交通省が同区間の物流を海上輸送に切り替えることや新幹線列車による貨物輸送など、抜本的な方策として複数案を検討しているとの内容であった。現在、国交省では「特定の形に決めているわけではなく、さまざまな案を検討している」としているが、当時、貨物を海上輸送に切り替える方向へと大きく傾いていたようだ。

その検討は、じつは2018年から行われていた。秋に部局横断的に検討チームが設置され、北海道ー本州間の物流実態を把握したり、代替手段の可能性を探ったりしている。例えば、現にある手段を用いた代替手法として船舶(青函間ではなく北海道ー本州間の長距離航路)や、陸上輸送としてはトラックがある。一方、新規の代替手段としては青函間の連絡船方式(かつてはあったが現在はない)や貨物新幹線方式が挙がる。これらについて技術・費用・期間、事業スキームの観点から可能性を検討していた。鉄道が関わる議論については、関係JRも出席している。「海上転換も」と報じられたのは、この段階であった。

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