アフターコロナで改めて考えたい「戦略の本質」 GAFAはイノベーターではないという事実
しかし結果は、ジョブズの圧勝でした。高級ファッションブランドとそん色ないスタイリッシュなアップルストアの存在は、アップルに顧客体験の完全なコントロールを可能にした上に、高収益という重要なプレゼントを同社にもたらしたのです。
ギャロウェイは、「セクシーな戦略」という言葉も使っています。アップルは、高級ファッションブランドの戦略を採り入れて、製品のアイデンティティを所有者と同一視させることに成功しました。iPhoneを所有することが、異性へ魅力をアピールすることにつながるようなブランド認知を獲得したのです。
フェイスブックは、人の知覚の最初の段階「認知」を抑えているとギャロウェイは指摘します。友人や知人の投稿から、人々は多くのことを「知り」、反応をするからです。
「フェイスブックが特に大きな影響を及ぼしているのは、マーケティングの漏斗のいちばん上にある「認知」の段階だ」(同書)
この特性により、フェイスブックは規模とターゲティングを同時に達成する唯一の存在となっています。18億6000万人ものユーザーを持ちながら、個人ごとの情報を実に細かく把握しているからです。人がつながることは、基本的な幸福感にも大きな影響を及ぼすとギャロウェイは指摘します。友人や愛する人とのつながりは、私たちが求めている基本的な欲求で、フェイスブックはそれを満たしてくれる存在なのです。
GAFAに学べること
4社の成功から、まったく新しく生まれた市場にも、後発で飛び込んで支配者になるチャンスがあることがわかります。コロナウイルスによる大激変で、日本企業はまさにこれから戦略眼を大きく試されるフェイズに突入していくのです。
GAFAが最初のイノベータ―ではなく、後発組であることは、彼らの現在の栄光に傷をつけるものではなく、むしろ学ぶべき点が多いことに注目すべきです。通常、先行する誰かが成功していて、それを目の当たりにすれば、「同じことをしてみよう」と思うはずです。
逆にGAFAは、じっくり先行者の成功を観察して、あえて「彼らと違うことをする」勇気と叡智を持っていたと言えます。
GAFAは超一流の人材を継続的に取り込むことが、突出した成功には不可欠だと考えているとギャロウェイは指摘しています。自らの能力に絶大な自信のある人は、人と違うことを恐れない。だからこそGAFAは、超一流の人材が集まる世界的な大学の近くで起業している。これも彼らが、「違う行動、違う思考ができること」を文化として重視する、つまり戦略思考をなにより大切にしていることを示しているのではないでしょうか。
後発組の有利さは、「そこにマーケットがある」ことを確認してから行動を起こしている点にもあります。早すぎるという落とし穴を避ける慎重さがあるのです。ただし、先行者と同じことをしては絶対にいけません。
先行者を見たら、彼らの背中と行動をじっくり観察して「彼らと違う形で新市場に参入する」戦略を選ぶのです。支配者になる栄光と膨大な利益は、違う行動を取る勇気と観察力を持つ、優れた戦略眼のある後発組こそが手に入れるのですから。
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