コロナ危機の今こそ考える!「税を払う」深い訳 国難を乗り切るには「無償の愛」が何より必要
税金は断じて会費ではない
私の近著『人はなぜ税を払うのか』は、常々、自分に問いかけていたテーマだ。それを、そのまま本のタイトルにした次第である。
税金については、それが「国という会員制クラブに入るための会費」だとか「国の施設やサービスを利用するための料金」だというような捉え方が根強い。
この種の理解に立つと、「会費を払わないものは国というクラブの会員ではありえない」とか「自分は国の施設もサービスも利用していないのだから、税金など払わない」というような奇妙な考え方が正当化されてしまう。
驚くべきことに、徴税責任の担い手である財務省のウェブサイトをみると、そこには「まさに税は『社会の会費』であると言えます」と書かれている。これを発見したとき、私は正直なところあぜんとした。
これは大きな間違いである。会員制のクラブでは、会費を払うことが会員であるための必須条件になる。たとえ昨年分の会費までは払っていたとしても、今年の会費が未納だったらもう会員ではない。
「会費未納につき、当クラブをご利用になることはできません」と門前払いを食らうことになってしまう。会費を払わなければ会員ではなく、会員でなければクラブの建物に入ることさえできないのだ。
では、税金を払えない人はどうか。もし日本国が会費制クラブであり、税金がそれに所属するための会費なのであれば、税金を払えない人々は会員ではないということになる。会員でなければ、日本国が提供するサービスを享受することはできない。そもそも物理的な入場自体が認められないわけであるから、日本国という場所から立ち去らなければいけないことになってしまう理屈だ。
税金を払わない日本人は、日本国民でなくなるのか。日本国というクラブから追い出され、立入禁止になるのか。もしそう聞かれたら財務省はどう答えるのだろうか。ぜひ聞いてみたい。
税金と会費は違う。会費は基本的に自分のために払うものである。むろん、自分の家族や友達のために払うケースもある。だが、それも「自分が選んだ人」のための支払いなのであるから、要は疑似「自分のため」だ。
だが税金はそうではない。病気になったり失業したり、何らかの理由で税金を払えなくなったとしても、それで日本国民が日本国民でなくなるわけではない。日本国から追い出されるわけではない。政府および自治体が提供するサービスを受ける資格がなくなるわけでもない。
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