引退2年、京急2000形にみる「看板列車の品格」 斬新デザインと高級感ある車内が人気だった

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最初に導⼊された「2011編成」には2013年、デビュー30周年を記念して登場時の窓周りが白のカラーリングが復活した。改造後の2000形の晩年は、「エアポート急⾏」として⽻⽥空港―横浜⽅⾯のアクセスを担当することが多かった。

快特品川行きとして走る2扉クロスシート車時代の2000形(写真:京急電鉄)

2012年から廃⾞が進み、最後まで残ったのは2011編成と「2061編成」の8両2編成。同社によると、2061編成は2018年3⽉15日、2011編成は3⽉28日に営業運転を終えた。

引退を控えた同年3⽉11⽇、京急は「さよなら2000形記念乗⾞券」(税込み2000円)を2018セット限定で売り出した。スクラッチカードで「特賞」が出れば、3⽉25⽇に運⾏する特別貸切列⾞に招待するという購入特典付きだ。同社によると、午前7時から⾦沢⽂庫駅で発売したところ、開始から2時間弱で売り切れるほどの人気ぶりだった。

「京急車両のスタイルを確立」

「特別料金を必要としない優等列車用車両として、関東では破格の客室設備だった」。引退から2年、2000形のデビューをこう振り返るのは、今年1月に横浜市の京急グループ本社ビルにオープンした「京急ミュージアム」の佐藤武彦館長。運転士や京急久里浜駅長などを務め、2019年の定年退職後にミュージアムの館長に就任した。社内では「電車への愛情が人一倍強い情熱漢」(同社関係者)とも評される。

佐藤館長は2000形について、2灯化したヘッドライトと両開き扉の採用、客室の戸袋窓や連結面の窓の廃止などを挙げ「現在に至る京急車両のスタイルを確立した」と位置付ける。その後に新造、または改造した車両にも「座席の座り心地のよさが引き継がれている」という。

運転士として登場間もない2000形を担当することは、とてもうれしかったそうだ。「特に横浜駅に進入する際は、隣のホームで国鉄線(当時)を待つお客さまに対して『見て、すごいでしょう!』と自慢するように軽く電子ホーンを鳴らして進入した」「2000形がまだ1編成しかないころ、京浜川崎(現・京急川崎)駅で降車されたお客さまに『すごくいい車両だね、何本作るの? 期待しているよ』と言われた」と懐かしむ。

佐藤館長は「私自身は2019年に定年となったが、入社同期の800形も一緒に引退、目指していた運転士になる頃デビューした2000形も引退して、1つの時代が終わったなと感じている」と胸の内を明かす。新型コロナウイルスの影響で京急ミュージアムは現在休館中。再開した暁には、2000形をはじめとする名車の往時の姿を、訪れた子供たちに思う存分語ってもらいたい。

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橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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