「VR」使った住まい選びがコロナ禍で注目の事情 住宅・不動産業界がVRに熱い視線を送る背景

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ほかにも、「消したり、付けたりできる」という。どういうことか?

例えば、賃貸物件でまだ入居中の物件の募集をしたい場合、入居者がいるので退去後でないと内見できないことが多い。この場合でも撮影ができれば、3D映像から生活感の強い入居者の家具や持ち物を「消す」ことで、退去時の様子を知ることができる。

賃貸物件ではこうした事例が多い。とくに、学生向け賃貸物件などでは、入退去時期が集中するので、入居者の物を消したうえで、VR内見するという方法が多く採用されるという。条件のいい物件はすぐに成約してしまうので、効率アップも課題だ。通常の現地見学では、1日で2~3物件しか案内ができないが、VR内見を活用すればより多くの物件を見ることができる。

家具を配置することで生活イメージしやすくする

さらに「消す」ことができなら「付ける」こともできる。例えば、最近注目される「ホームステージング」がある。何もない室内空間だとどうやって生活するかイメージしづらいが、家具などのインテリアを配置することで、生活をイメージしやすくし、成約につなげるという手法だ。

(上)居住中の場合は入居者の家具などが残っている(真ん中)家具消し機能で何もない空室状態を再現する(下)さらにリアルな質感の家具やインテリアを配置するVRホームステージングも可能(画像:ナーブ提供)

わざわざ実際の家具を手配して室内に配置しなくても、VRの映像上にリアルな質感のインテリアを配置する「VRホームステージング」なら、より効率的というわけだ。

実際に、野村不動産アーバンネットでは、2017年12月から同社の不動産情報サイト「ノムコム」に売買の空室物件の「VR ホームステージング」を導入し、2019年10月からは居住中の物件もVRで家具を消して付けるバージョンアップをして、VRを活用している。

VRで消したり、付けたりできるなら、当然「変える」こともできる。例えば、新築分譲マンションでカラーセレクトなどのメニュープランがある場合、部屋全体の印象をVRで確認することもできる。

さらに、中古住宅で壁紙を変えたり入り口の場所を変えたりして、リノベーション後の室内を表現することもできるわけだ。

こうして見ていくと、VRで見学できる範囲がどんどん広がっていることがわかる。もちろん、VR内見だけで物件を決めるのではなく、実際に現地に行って周辺環境や動線、騒音、住人の様子など多様な情報を集めたうえで、契約するかどうか判断する必要はある。

5G時代が到来した今、デジタルテクノロジーのさらなる進化で、VRでできることも増えていくだろう。「VRで確認すること」と「実際に目や耳で確認すること」をうまく使い分けて、賢い住まい選びができるようになることを期待する。

山本 久美子 住宅ジャーナリスト

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やまもと くみこ / Kumiko Yamamoto

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「All About(最新住宅キーワードガイド)」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーの資格を有す。

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