【産業天気図・ソフト・サービス】システム開発需要減退、保守・運用事業が支えても終始「曇り」
09年10月~10年3月 | 10年4月~9月 |
ソフト・サービス業界は2010年10月まで終始「曇り」が続く見通しだ。企業向けシステムの保守・運用サービスが底支えし、業界主要各社の10年3月期は減収減益でも赤字転落には至らない。ただ中期的には、保守・運用における点検・補修回数の抑制や運用担当者数の減員といった要請が企業側から出ており、こういった要請への対応が問われるようになる。また、インターネットを通じてソフトやデータ管理サービスを提供する「クラウドコンピューティング」への対応で、大型のデータセンター投資の判断も迫られそうだ。
収益の変動幅が大きいシステム開発は、富士通<6702>、NEC<6701>の総合電機でも、NTTデータ<9613>など専業大手でも軒並み大幅な減退が続いている。金融や流通向けは案件によって跛行性が出るが、製造業向けに関してはほぼ一様に大きく落ち込んでいる。投資自体の見送り案件も多い上に、受注規模の縮小、先延ばしなども頻発している。10月以降、徐々に引き合いも出始めているとはいうものの、実際の受注に結び付くかどうかの見通しは、現時点でははっきりみえてこない。
通常、企業のIT投資は、生産系の設備投資よりやや遅れ気味で、景気に対して遅効性がある。このため一般企業の業績回復の兆候が見え始めてからでも受注の回復が見え始めるまでに半年~1年のタイムラグが生じる。現時点では、受注の急回復は見込めないとして、業界各社はコスト削減に力を注いでいる。特にターゲットとなっているのが開発外注費だ。受注量が減退しているため、社員の配置換えなどで対応するという。
またクラウド化の流れを受け、ユーザー企業自身が大型のサーバーを保有し管理運営する従来のスタイルではなく、アプリケーションソフトやデータ管理までサービス提供企業が扱う必要性が高まっている。ユーザーが保有するのは、パソコンなどの端末部分だけ。クラウド化の流れは、金融機関の基幹業務など高度なセキュリティを要求される業務を除いて、幅広く進行するのが確実。ソフト・サービス業界各社は大手から中堅まで、クラウド化時代の要となるデータセンターの新増設を行わなければならない。当面はこのデータセンター投資と償却負担に耐える体力が求められそうだ。
(小長 洋子)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら