JR本州3社、コロナ禍で読めない業績先行きは? 各社ごとに推計、利益率の差が明暗分けるか

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ただし、通勤・通学など在来線の日常利用が一定割合を占めるJR東日本と違い、東海道新幹線は出張や観光などの利用が中心となる。新型コロナウイルスの感染が拡大している間は、利用状況は在来線より低くなりがちだ。

仮に新幹線の利用状況が通常期の1割に落ち込むと仮定し、外出自粛要請が2カ月続くとその間の運輸収入は2000億円程度落ち込む。ほかのJRと比べて、JR東海は新幹線への経営依存度が高いため、東海道新幹線の動向が業績を大きく左右する。ゴールデンウィークの利用は相当落ち込みそうだが、本来なら書き入れ時のお盆や年末年始ははたしてどうなるだろうか。

JR西日本は利益率の低さが不安要因

JR西日本の2018年度単独決算は運輸収入が8734億円だった。営業費用は8301億円。費用項目として主要なものは人件費2158億円(費用全体に占める割合は25%)、業務費2073億円(同24%)、修繕費1640億円(同19%)、減価償却費1343億円(同16%)、動力費452億円(同5%)だ。

京阪神地区を走るJR西日本の新快速電車。近畿エリアの通勤輸送は新幹線と並ぶ同社の主要な収入源だ(写真:sillky6/PIXTA)

JR西日本の2018年度単体売上高営業利益率は15.3%で、JR東日本やJR東海と比べると低いことも不安要因だ。

2018年度の単独決算の営業利益は1507億円。JR西日本の1日当たりの運輸収入は約24億円なので、利用状況がJR東日本と同じく通常期の2割だと仮定すれば、1日当たり19億円の収入を得られていないことになり、もし外出自粛要請が2カ月続けば運輸収入は約1100億円落ち込むことになる。この時点で、年間の営業利益のかなりの部分が消えてしまう。

3社に今後の計画を見直すという動きは今のところ見られない。JR東日本は「変革の歩みは止めない」としており、JR東海もリニア中央新幹線の工事を「着実に進める」という。

ただ、これは新型コロナウイルスの影響が一時的なものという前提だ。テレワークの進展による通勤の減少、ネット会議の進展による出張の減少など、“コロナ後”の世界が現在と異なる姿になるのだとしたら、JR各社の経営戦略も軌道修正を余儀なくされるのは間違いない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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