JR本州3社、コロナ禍で読めない業績先行きは? 各社ごとに推計、利益率の差が明暗分けるか

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JR東海の2019年度決算は、連結売上高が前期比1.8%減の1兆8446億円、営業利益は同7.6%減の6561億円だった。新型コロナウイルスが売り上げに与えた影響は運輸業で約640億円、流通業で約70億円、不動産業で約10億円という。

単独決算の1〜3月期を抜き出すと売上高が2975億円、営業利益は376億円。JR東日本と違って黒字を維持した。とはいえ、前年度の第4四半期の売上高は3523億円、営業利益は990億円だったので、営業利益は614億円減っている。

JR西日本の2019年度連結売上高は前期比1.4%減の1兆5082億円、営業利益は同18.4%減の1606億円だった。

単独決算は売上高が前期比1.9%減の9619億円、営業利益は同20.6%減の1197億円。単独決算の1〜3月期を抜き出すと、売上高が2028億円、営業損益は407億円の赤字だった。前年度の1〜3月期は売上高が2416億円、営業損益は15億円の黒字だった。収支でいうと、JR東日本とJR東海の中間的なポジションだ。

2020年度の業績はどうなる?

では、JR本州3社の2020年度の業績はどのようなものになるのだろうか。政府が4月7日に緊急事態宣言を発出したことで、4月以降の人の移動は3月よりも減っている。「今後の収入動向が極めて不透明であり、業績予想の合理的な算定が困難」(JR西日本)といった理由から、3社とも業績予想は未定としている。

新型コロナウイルス感染拡大の収束時期がわからない現状では仕方がないとはいえ、ある程度の推計は可能だ。各社の運輸事業について推計してみた。

JR東日本の例にとると、コロナの影響がない2018年度の単独決算によれば営業費用は1兆7214億円。費用項目として主要なものは人件費4499億円(費用全体に占める割合は26%)、修繕費3011億円(同17%)、減価償却費2992億円(同17%)、租税公課975億円(同5%)、機構借損料847億円(同4%)、動力費661億円(同3%)など。修繕費は安全運行を考えると削減は容易でない。減価償却費は会計ルールに基づいて費用計上されている。租税公課は固定資産税など定められた税率に基づき計算される。機構借損料は整備新幹線のリース料でこれも削減できる費用ではない。

実際、JR東日本の2019年度1〜3月期の単体営業費用は5204億円だった。2018年度1〜3月期は4928億円だったので、新型コロナウイルスの影響で売り上げが減ったにもかかわらず、営業費用は削減できなかったことになる。

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