JR本州3社、コロナ禍で読めない業績先行きは? 各社ごとに推計、利益率の差が明暗分けるか

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4月以降、JR東日本は新幹線や在来線特急などの臨時列車を中心に運行を取りやめる列車を増やしているが、運休によって運行コストはどのくらい削減できるか。動力費は列車の運休によって節約できそうだが、そもそも営業費用に占める金額が大きくないので収入減少の埋め合わせには限界がある。

続いて収入を見ていく。2018年度の運輸収入は1兆8567億円だった。これを1日当たりに直すと約50億円となる。利用状況は新幹線と在来線で異なるし、平日と土休日、ゴールデンウィークでも異なるが、平均して通常期の2割に落ち込むと仮定すれば、1日当たり40億円の収入を得られていないことになる。もし、外出自粛要請が2カ月続けば運輸収入は2400億円落ち込むことになる。外出自粛要請解除後の移動がすぐに平年並みに戻るのは考えにくく、運輸収入の落ち込みはもうしばらく続きそうだ。2018年度の単独決算の営業利益は3918億円。費用削減の余地があまりないことを考えると、収入減がほぼそのまま利益の減少に直結することになる。

連結決算では渋谷スクランブルスクエアなど新規開業物件のオフィス賃貸料が得られるのはプラス材料だが、物販、飲食、ホテルなどは鉄道同様に新型コロナウイルスの影響を受けており、軒並み苦戦中。鉄道事業の落ち込みを抑えるバッファーにはなりにくいのが厳しいところだ。

JR東海は営業利益率は高いが…

JR東海も2018年度の単独決算で同様の分析を行うと、運輸収入は1兆3966億円で、1日当たりに直せば38億円だ。

東海道新幹線の新型車両N700S。JR東海の収益の柱は東海道新幹線だ(撮影:尾形文繁)

営業費用は7971億円。費用項目として主要なものは業務費1980億円(費用全体に占める割合は24%)、減価償却費1934億円(同24%)、人件費1797億円(同22%)、修繕費1405億円(同17%)、動力費661億円(同5%)など。営業利益は6677億円だ。

運輸事業の利益率を示す2018年度単独決算の売上高営業利益率は45.5%。JR東日本の同18.5%と比べると非常に効率的な経営を行っている。

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