ゴーンの生い立ちから日本脱出までのリアル 在日フランス人記者だから書けた事件の全容

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2019年3月、作業員に変装し拘置所から出所するカルロス・ゴーン(写真:AP/アフロ)
2019年末、極秘の海外脱出で日本社会に衝撃をもたらしたカルロス・ゴーン。日産復活の立役者となった伝説の経営者の生い立ちから逃亡までの生きざまを丹念に追った『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』がこのたび翻訳出版された。ゴーン事件の全容を描いたその内容を、ジャック・アタリなどの翻訳者としても知られる林昌宏氏が紹介する。

レバノンでの自己中心的なプレゼン

コロナ騒動で忘れられてしまった感もあるが、2019年末、年末の賑わいを切り裂いて報道された、日産の元経営者、カルロス・ゴーンの日本脱出のニュースを覚えておられる方もいるだろう。

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私が本書の翻訳を打診されたのはその少し前のこと。事件の記録として読まれる本になるだろうとは思っていたが、話を受けた直後に脱出事件が勃発。一気に世界的な話題となって、ドラマチックに展開が進んでいった。

日々新しい報道が繰り広げられ、世間を騒がすゴーン。騒々しい雰囲気の中で、翻訳を進めることになった。

本書の記述は、ゴーンの海外脱出の経緯から始まる。当初の原稿は、逮捕後の拘置所での生活から話が始まっていたのだが、急遽、冒頭に脱出劇の記述が追加されることになり、いきおい私も、日々のニュースに釘づけにならざるをえなかった。

正月明けにレバノンでゴーンが開いた会見では、英語、フランス語、アラビア語、ポルトガル語を流暢に操り、まるでオペラ歌手のような身振りで身の潔白を大げさに主張していた。同時に、日本の司法制度を痛烈に批判していた。

それから、「私が逮捕されてから、日産の業績はガタ落ちだ」という趣旨の極めて自己中心的な理屈を並べ立てていた。この会見では、学歴と経営能力を武器に既存の大組織で立身出世し、逮捕されても徹底抗戦するゴーンの並外れた胆力が再確認できた。

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