日立グループ、「金属」「化成」で不正相次ぐ事情 日立金属で10年以上の検査データ不正が発覚

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原因究明はこれからだが、コストを意識していた可能性もある。今回顧客との契約とは違う工程を未申請のまま変更したケースでは、自社材料から外部購入に変更していた。

その理由について、西山会長は「おそらくはコスト。外部購入の方がコストが安いから変更したと推測できる」と認める。もっとも顧客は日立金属の材料を使用した製品と理解して購入しているため、契約が不成立になる恐れもある。

試される「名門」のガバナンス力

日立金属は日立化成とともに日立グループ御三家の一角を占め、売上高は1兆円規模を誇る。だが、磁石事業などの不振で業績低迷が続いている。2019年4~12月期は本業の儲けを示す調整後営業利益が前期比72%減の118億円に下落。前期まで3期連続で減益のうえ、2020年3月期は磁性材料で減損を計上し、470億円の最終赤字に転落する見込みだ。足元では新型コロナウイルスの感染拡大もあり、さらに下振れする可能性が高まっている。

日立金属幹部はここ数年の業績不振について、「構造改革を怠り、全方位で積極投資した結果、固定費が大幅に増えてしまった」と分析する。西山氏は「一刻も早い業績の回復、事業再編に取り組んでいきたい」と抱負を述べたばかりだった。

日立金属はもともと独立心が旺盛で、日立製作所との取引も少ない。ただ、2010年に日立金属社長を日立製作所の副社長に就けるなど、グループの一体感を高める動きもあった。その後、2013年に日立電線と経営統合し、日立化成との統合も模索していたが、日立化成は昭和電工への売却が決まった。そうしたこともあって、日立金属も業績が回復すればグループ外へ売却されるのではないかとの観測が強まっていた。

ただ新たな問題が浮上したことで、売却の行方は不透明になってきた。原因究明には少なくとも数カ月かかるとみられるが、日立化成の不正問題のように、調査の過程でまた追加の不正が出る可能性も残る。名門で相次いだ不正をどう食い止めるか。日立のガバナンス力が試されている。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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