しかし、脇阪さんが普段強みとするのは対面販売のノウハウであり、それほど通販で実績があったわけではない。
それでもこうしていいスタートが切れたのは、プロジェクトに賛同する8社の「応援団」のリソース活用がうまくいっていることが大きい。
例えば発起人のヤマト運輸は、北海道中の営業所を通じ、取引のある食品事業者に声がけをした。また、通常より送料を安くするほか、特別価格で発送業務のほとんども担っている。
ほかの応援団の参加は、脇坂さんの人脈によるものだ。デザイン会社のアマヤドリとは過去に取引があり、今回ロゴ作成を依頼したら数日で仕上げ無償提供してくれた。そのほか、以前から付き合いのあった旭川信用金庫やソフトバンク、農業プロデュースでかかわっている東神楽町などには、地元の食品事業者に同プロジェクトを周知してもらうよう打診。皆、すぐに快諾してくれた。
協力依頼する際に意識していることについて脇坂さんはこう話す。「支援系の企画では『こんなに頑張っていいことをしているのだから』と相手に無理なお願いをする人がいるが、それではうまくいかない。各社の本業の範疇で相手がすぐにできることを見極めて協力を求めることが大切」
しかし、応援団の全社が集合したことはない。全体ビジョンや進捗は共有するが、特に今回はスピード重視であるため無駄な会議はしない方針だ。稟議や同意が必要な取り組みも極力避ける。そのため、事業設計と推進は脇坂さんが中心となり、必要に応じ各社に協力を求める形をとっている。
商品設計にも工夫がある。リアルな物産展と同じく各出店者の商品をズラッと並べれば華やかだが、それを最初からやると準備に時間がかかってしまう。そこで、できることをやろうと、まずはお楽しみセットでスタートしたのだ。
現在、6~7商品を内容が偏らないよう詰め合わせているが、各出店者の在庫にはどうしてもバラつきがある。納品も流動的だ。しかし、理想の品ぞろえが整うまで待っていては出店者の苦境が長引いてしまうので、思い切って商品説明は一切せずとにかく売ることにした。
ところが、想像に反して、販売開始の夜の時点で注文は5000件を超えた。注文は全国各地からあり、購買層の年齢も幅広い。
「告知はオープン前日にプレスリリースを打ちSNS投稿をしただけ。テレビにすぐ採り上げられたこともありSNSで認知が広まったようだが、その威力に驚いた。中身がわからないのを『ガチャみたい』と若い人たちが面白がってくれたことも想定外。『オンライン北海道物産展』というネーミングがわかりやすかったのかもしれない」と脇坂さんは語る。
当初11社だった出店事業者は現在約50社まで増えた。アイテムも250以上集まったため、当初予定していた各社ごとの商品販売も、5月頃から順次始められそうだという。
「応援」だけではいずれ限界を迎える
うれしい悲鳴を上げる場面もあった。想定外に売れたために、発送業務が一時パンク。発送に10日~30日もの時間がかかることになり、お詫びのメールを注文者に送る事態に陥ったのだ。
ただこのご時世、クレームはほとんどないという。数百名から返信があり、「1~2か月かかってもいい」「毎年物産展を楽しみにしている」など多くが応援メッセージという。
まさに今「オンライン北海道物産展」の商品が売れているのは、“応援消費”したい消費者の後押し、という側面もあるだろう。
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