「プロジェクトのコンセプトに賛同して購入してくれた人が多い印象」と脇坂さんは話す。今回、同プロジェクトのコンセプトを「ペイフォワード」とした。これは、当事者間で完結する恩返しとは異なり、受けた恩をほかの誰かに別の形で渡せば世界はよくなるという「恩送り」の発想だ。昔観た映画「ペイフォワード」からヒントを得たという。
この概念を応用して、売上金の一部で飲食店を貸し切り「こども食堂」を開催し、ひとり親家庭と飲食店の支援にもつなげるプロジェクトにした(時期や方法はコロナ問題の状況により検討)。
値下げして在庫処分するだけでは事業者の次にはつながらない。だから値引きしないのと同時に、誰かに喜んでもらうことも事業者のモチベーションにつながるはずなので、恩送りをするのがいいと考えたという。
このコンセプトに、消費者が共感した。購入者のメールやSNSの投稿には、ペイフォワードへの共感や、こども食堂への貢献などを理由に購入したという内容が多くみられたという。
東日本大震災以降に、人や企業、地域など特定の対象を応援しようと広がった「応援消費」。「ふるさと納税」や「クラウドファンディング」もその1つだ。コロナ問題を機に、再び「応援消費」が盛り上がり始めている。特に同プロジェクトのようにインターネットを活用する形で、打撃を受けた企業や業界を支援する企画が増えている。
しかし、脇坂さんはこう考えている。
「『応援』は、1~2カ月で限界を迎えるだろう。東日本大震災のときでさえ長期化するにつれ『応援疲れ』があった。ましてや今回は、応援する側とされる側が明確である災害時と異なり、全員がSOS状態。消費者が楽しいと感じるような支援の形を模索したい」
そのために、同サイトを緊急的な応援企画ではなく、1つの販路として成立するサイトに育て上げたいという。売れ行き好調で認知が広まり出店者が増えたため、この構想は非現実的ではないとみており、「消費者がいつでも好きなときに北海道の食を買うことができる場所にしたい」と脇坂さんは語る。「実はこんな商品もある」「材料はあるのでこんな商品も作れる」など出店者から意欲的な提案も出てきているところだという。
5月中には専用の食材を購入した人限定の「オンライン飲み会」も開催する予定だというが、例えば食品事業者も交えたオンライン飲み会も実施するなど、事業者と消費者をつなぐコミュニケーションメディアの構築も検討しているという。
また、対面販売ノウハウの強みを活かし、「コロナ問題が落ち着いたら、オンラインの出店者と一緒に全国を回ったり、北海道で出店者を巡るツアーを開催したりと、オフライン版での消費者とのつながりも広げていきたい」と意気込む。
この状況を楽しめる人が生き残る
現在、このプロジェクトの売れ行きは好調だが、脇坂さんの本業は「大赤字」だという。マルシェと店舗はすべて閉鎖。特に東京のマルシェは深刻だ。マルシェに軸足を置いていた事業者や農家も多いので一刻も早く支援をしたいが、生鮮商品が多く、東京では配送拠点の確保が難しいなどの事情から同プロジェクトと同じ形での通販は厳しい。オンライン化したくてもできないのだ。ことは単純ではない。
自身もこうした状況のため苦境に立たされている出店者の気持ちがよくわかるが、今はこう考えているという。
「私もオフラインからオンラインにチャレンジしたし、自身の事業について改めて足固めをするつもり。食品事業者にも、効率性、販路、商品と事業を見直す機会にしてほしい。どの業界も今苦しいはずだが、この状況を楽しめる人が生き残るのだと思う」(脇坂さん)
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