在宅勤務を阻む「ハンコ問題」、激論の舞台裏 デジタル化を突き付けられた日本の課題

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民間企業の動きを受け、政府与党も動き出した。自民党の行政改革推進本部規制改革チームは4月6日、新型コロナウイルスに対応するデジタル規制改革についての緊急提言を安倍首相に申し入れた。この中に「押印原則の徹底的見直し」も盛り込まれた。

規制改革チームの座長を務める同党の小林史明衆院議員は、「今回の改革には、押印が必要な手続きがあったとして、そもそもそれは必要なものなのか、本当に印鑑が必要なのか、印鑑証明のある実印を必要としない手続きにおける認証の有効性はどうなのか、という3つの観点がある。政治・行政が規制を見直すのと同時に、民間に対してもメッセージを出すことで、商慣習を変えるきっかけにしたい」と話す。

電子契約とハンコは共存できるか

2019年末に施行したデジタル手続法を受け、国は行政手続きのオンライン化を進めている。小林議員によると、2019年来精査してきた2万近い手続きのうち、印鑑証明のある実印が必要な手続きはわずか200弱。残りは一般的な印鑑や署名、本人確認書類を求めるものだったという。

小林議員は「3月末に行う手続きを今デジタル化しても恩恵を受けるのは来年だ。4~6月に迫っている手続きの見直しを優先的にやっている。民間企業からも聞き取りを行い、ニーズの高いところの優先順位を上げていく」と語る。

では、こうした動きをハンコ業界はどう受け止めているのか。「今の流れは必然的なことだとは思うが、ハンコだけを悪としてとらえないでほしい。非常時だからこそ民間同士で信頼関係があれば、今回はハンコではなく、メールで同意したことにすることもできるはず」。そう話すのは、ハンコの製造業者などで構成する業界団体・全日本印章業協会の徳井孝生会長だ。

自身もハンコの製造・販売業を札幌市内で営む徳井氏は、「職人が手で仕上げたものほど偽造しづらく、法人の実印には強くおすすめしている。(電子契約はパソコンやスマートフォンなど)機器を使いこなせない人、経済的に購入できない人を置き去りにしてしまう。ハンコを希望する人が1人でもいるのであれば(電子とハンコは)共存していくべき」と訴える。

コロナをきっかけに、あらゆる手続きや業務のデジタル化が注目されることになった。日本特有の商慣習で、伝統のあるハンコが悪者になった感があるが、コロナを起点に、日々の業務の効率化を考えさせられたことは間違いない。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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