歳費2割減で露わになった政治家の独善と欺瞞 批判逃れの茶番劇に国民の批判が高まる

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各党の対応はバラバラとなるが、その背景には、各政党やそれぞれの所属国会議員1人ひとりの台所事情の違いがある。「国会議員だから、として画一的に対応するのはおかしい」との指摘もあるが、「多額の税金で待遇が保証されている国会議員は、10万円どころかさらに身銭を切るのが当たり前」という庶民感覚とのズレは隠せない。

国会には、自民党の河井克行前法相と河井案里参院議員夫妻のように公選法違反疑惑で雲隠れを続ける議員や、緊急事態宣言下で「セクシーキャバクラ」通いが発覚し、立憲民主党を除籍処分となった高井崇志衆院議員など、「かなりの数の不良議員」(政界関係者)が存在する。

消える「井戸塀政治家」

これらの議員は、政治家としての活動は「ほとんどしていない」(同)とみられるだけに、インターネット上でも「こんな議員の歳費や手当に血税が使われるのは許せない」との声があふれる。

多くのメディアは、政治家による歳費2割削減や10万円の受け取り辞退などについて、分析や解説記事をあまり伝えていない。大手紙幹部は「コロナ報道に埋没し、議員の格好つけにすぎないので、優先順位が低かった」と釈明する。

しかし、コロナ対策の成否は「首相や閣僚だけでなく、個々の国会議員の政治判断にもかかっている」(自民長老)のは事実だ。それだけに、「国会議員の自覚不足が、コロナ対応での国民の不信感を広げている」(同)ことは否定できない。

国会議員はかつて「選良」と呼ばれていた。また、一昔前には「井戸塀政治家」という政界用語もあった。前者は「選ばれたすぐれた人物。特に、国会議員をさす」(三省堂大辞林)とされ、後者は「国事に奔走して家財を失い、残るは井戸と塀ばかり」という、清貧を旨とする政治家像を指す言葉だった。

しかし、「いまや政界では、選良や井戸塀、清貧というような言葉は死語となった」(有力政治学者)のが実態だ。安倍首相はコロナ禍を「第3次世界大戦」と表現したとされるが、今回の議員歳費や10万円給付をめぐる対応をみる限り、「国民や前線兵士を放置して、大本営発表を続けた帝国日本の軍部の姿が二重写しになる」(同)と指摘されても仕方がない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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