歳費2割減で露わになった政治家の独善と欺瞞 批判逃れの茶番劇に国民の批判が高まる

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これだけ見れば表向きは「範を示した」ようにもみえる。しかし、国会議員は歳費のほかに、文書通信交通滞在費などの名目で各種手当を歳費とほぼ同額受け取っており、これに各党(共産党を除く)に交付される政党助成金や都内一等地の議員会館・宿舎の家賃の優遇などを合わせれば、議員1人当たりにかかっている「コスト」は年額1億円超との推計もある。

このため、厳しく計算すれば「削減の実態はわずか3%程度という微々たるもの」(政界関係者)となる。こうした実情を知る橋下徹元大阪市長は「せめて5割削減と言えないのか。国会議員は結局、自分の財布が大事」などと批判。永田町でも「批判逃れの茶番劇」「国会議員のモラル低下の表れ」などの自嘲めいた声が広がる。

大臣は10万円の受け取りを辞退

一律10万円給付に対する大臣や国会議員の対応も問われている。政府は21日の持ち回り閣議で、大臣と副大臣、政務官を対象に10万円の受け取り辞退を申し合わせた。安倍晋三首相が20日の自民党役員会で、「10万円については、全閣僚が受け取りを辞退する」との判断を示したことを受けたものだ。これに伴い、自民党も所属国会議員の受け取り辞退を決定する方針だ。

公明党の山口那津男代表は「私自身は受け取らない」と語ったが、党としての受け取りの可否は決めない考えを示すなど、与党内でも対応が分かれている。

野党側では、立憲民主党の安住国対委員長が国会議員の受け取りの可否について慎重に検討する考えを示し、国民民主党は総務会で党所属国会議員が受け取った10万円を寄付などで社会還元する方向となった。維新の松井一郎代表も、党所属国会議員と地方議員が受け取ったうえで、党が全額を徴収し、寄付に回す方針を明らかにした。

一方で、共産党の小池晃書記局長は会見で「私はもらわない」としつつ、「受け取るか受け取らないかを聞くこと自体をやめたほうがいい。もらわない選択肢もあるし、もらって全部寄付する人もいる。それぞれが判断すればいい」と党としての方針は決めない考えを示した。

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