外出自粛なのに「オフィス家具」が売れる理由 自宅を職場仕様に変える人が増加中

同じくオフィス家具メーカーの内田洋行が都内に構えているショールームにはこの数年、個人の来場客が増えている。「テレワークの普及や働き方の多様化を受けて、在宅向けに高級オフィスチェアを購入する客が非常に多くなっている。長時間同じ姿勢で仕事をしていると、安価ないすでは疲労がたまやりやすいためだ」。同社の高級オフィスチェアは前期比で1.6倍の売り上げを記録した。

オフィスチェアだけでなく、デスクの需要も高まっている。同社のデスク「OPERNA(オペルナ)」は、天板の高さを65センチから最大125センチまで自在に昇降させられ、気分転換に立って仕事をすることも可能だ。テレビ会議の増加を受けてディスプレイの高さや角度を自在に変えられるモニターアームや、書類や道具をまとめるだけでなくパーテーションとしての機能も担えるキャリーボックスなどの需要も喚起されるとにらむ。
オフィス家具メーカー各社はもともと、働き方改革の流れを受けたテレワーク需要に照準を定めていた。企業側もサテライトオフィスやシェアオフィスの導入に積極的で、オフィススペースの増加に比例して、オフィス家具の需要も年々増加している。総務省によれば、テレワークを導入している企業の割合は2018年時点で19.1%。2012年の11.5%に比べてじわじわと増加している。
そこに新型コロナウイルスという新たな要素が出てきた。外出自粛に伴って急激に普及した在宅勤務のみならず、感染リスクを抑えるために、執務フロアを分散させる動きも広がっている。
メーカー各社は様子見
他方で、「在宅」需要がメーカー各社の業績を押し上げるまでには時間がかかりそうだ。文具やオフィス家具メーカーのコクヨは、「緊急事態宣言の間は事業所が閉鎖され、受注しても納品が中断されてしまう」と話す。オフィス家具は受注生産が主で、納品までに1週間以上かかることも珍しくない。工場の稼働状況によっては供給が追いつかないおそれがある。
また、代理店を通じた法人向けの営業で成長を続けてきたオフィス家具メーカーにとって、B to Cビジネスは経験が浅い。各社はECサイトこそ開設しているものの、在宅向けの商品を新たに開発するというよりは、既存のオフィス家具を在宅向けに転用しているのが現状だ。各社はまだ様子見モードといったところだろう。
新型コロナウイルスの終息後も在宅需要が根付けば、オフィス家具メーカーにとっては大きな商機になりそうだ。その時は「オフィス家具」という場所に縛られた名称も変わっていくのかもしれない。
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