スズキがインドでシェア50%超を維持する理由

世界5位の大市場で販売台数はトヨタの10倍

最初のモデルであるマルチ800は、エンジンを軽自動車よりも大きな800ccとしたほか、悪路が多い現地の道路で損傷を抑えるためにホイールのリムを厚くし、前後バンパーを板金修理で直せるように樹脂製から鉄製へ変更するなど、現地の事情を合わせた改良が施された。

「日本と同じもの売る」のではなく、「インドの人々が欲しがるものを用意する」という顧客目線の姿勢を当初から貫いているのだ。

インドで販売される現地独自の「ワゴンR」(筆者撮影)

そんな商品展開は、現在のマルチ・スズキのラインナップを見ても理解できる。「ワゴンR」やアルトといった日本でもおなじみの車種があるものの、いずれも日本仕様とは車体サイズ(軽自動車よりは大きい)からして異なる現地専用車。現地のニーズに合わせた設計としているからだ。

「全長4m」インドの税制に合わせた商品展開

「エスプレッソ」のように、日本の軽自動車のプラットフォームを活用しつつ、現地法人がデザインや設計を主導して開発した車種もある。

「エスプレッソ」は軽自動車用プラットフォームを拡幅して作られた小型SUV(筆者撮影)

ほかにも「スイフト」のセダン版である「ディザイア」や全長を縮めた「エスクード」に相当する「ビターラ ブレッツァ」など、インド独自モデルも展開している。

また、スイフトや「バレーノ」など同じ基本設計で日本とインドの両方で販売しているモデルもあるが、悪路もある現地の道路事情を反映して、インド向けは最低地上高を上げるなどの作り分けが行われている点も見逃せない。徹底して、現地に合わせた設計でインドの人が使いやすい、喜んでもらえるクルマとしているのだ。

「ビターラ ブレッツァ」はインドSUV市場でシェア1位の人気モデル(筆者撮影)

そして上記の車種すべてがそうであるように、マルチ・スズキのモデルは全長を4m未満に抑えた車両が多い。現地で販売する乗用車14モデルのうち、なんと10車種が全長4mに満たない車体サイズなのだ。

なぜなら、全長4m未満のクルマには税金などの優遇があるから。インドの乗用車販売の大多数を、全長4m未満のクルマが占めている。

しかし、他メーカーは大きな車体サイズが好まれる、インド以外の市場に向けて開発した車種が多い。そんな中、マルチ・スズキは4m未満の枠に収まる車種を他メーカーよりも多く取りそろえ、顧客の好みやニーズ、そして予算に合わせて選べる体制を整えているのだ。

次ページ約3000の販売拠点を持つ強み
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