安倍政権の「一律10万円給付案」は遅すぎた なぜ市場の反応はかなり冷ややかなのか?
[東京 16日 ロイター] - 緊急経済対策の目玉である現金給付策が変更されようとしている。一律10万円給付なら総額12.6兆円に上る大規模な政策になるが、マーケットでは遅すぎるとの声が多く、株価はさえない。給付が遅れれば消費者の不安は払拭されず、営業継続を選択する店舗も残り、新型コロナウイルス感染拡大のリスクが消えないためだ。
5月には間に合わず?
一律給付の利点は、選別の手順がなくなることで配布スピードが速まることだ。本当に困っている人に十分な資金が行きわたらないといったデメリットもあるが、売り上げや給与の急減に対する不安を解消するには有効な政策である。
しかし、その利点を活かすような政治の動きにはなっていない。安倍晋三首相は16日、新型コロナ対策として一律10万円の現金支給を盛り込むため、2020年度補正予算を組み替えるよう指示したが、それまでは補正予算を速やかに成立させた後、という考えを示していた。
「2次補正予算なら9月、1次補正をこれから組み換えるにしても、時間がかかるため、実際の給付は6月になる可能性が大きい。いずれにしても一番大変そうな5月には間に合いそうにない」とニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、矢嶋康次氏は指摘する。
消費者の不安が消えなければ、経済の収縮を止めるのは難しい。10万円給付案が金融市場に伝わったのは14日夕方だが、15日、16日と日経平均は続落。国内の材料だけで動くわけではない日本株だが、少なくとも株価の反応からは、好感する動きはみられていない。