「悲観の極み」の金融市場で「光」を見つける方法 先行指標の中には底打ちを示すものもある

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ニューヨーク、タイムズスクエアも閑散(写真:ロイター/Brendan Mcdermid)

日々、うんざりするようなヘッドラインで埋め尽くされている。

アメリカ労働省が先週3日に発表した3月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比70.1万人減と過去最大の減少となった。雇用者が減少に転じたのは2010年9月以来、9年半ぶりのことである。これに応じて失業率も4.4%と前月比0.9%ポイントの大幅な悪化となった。

だが、3月後半の2週間で新規失業保険申請件数は合計1000万人に到達しており、この「1000万人雇用喪失」の衝撃は4月以降に顕現化する。雇用統計の調査対象期間は毎月12日が含まれる週であり、「国家非常事態」の宣言は3月13日で、各州で自宅待機令が相次いで発令されたのはさらにその後の話だからだ。

1000万人が今の就業者数から失業者数に振り替われば、失業率は10%近くまで上昇する計算になる(ただし、失業者とカウントされるには就労意欲を持ち求職活動をすることが条件なので、就業者でなくなってもすべてが失業者にカウントされるとはかぎらないことには注意)。そもそも3月に記録した4.4%はFRB(連邦準備制度理事会)のスタッフ見通しにおいて完全雇用に近い水準であり、文字どおり「序の口」だ。

今後の経済見通しについては非常にばらつきがありコンセンサスの集約が難しいが、アメリカの4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率を前期比年率マイナス30%以上と見込む声も上がっており、しかもそれに違和感がない雰囲気がある。景気に断層は生じないはずだが、今回ばかりは例外であり、文字どおり戦争並みの惨状だ。

どこかに「光」を見つけられないか?

とはいえ、こうした壊滅的なハードデータに、市場は悲観こそすれども、パニックにはなっていない。もう、あきらめに近いものがあるのかもしれない。世界中のどこを見渡しても今期(4~6月期)の経済・金融情勢は「悲観の極み」であり、前回の金融危機でいえば、2008年10~12月期から2009年1~3月期に相当する。雇用・賃金のような遅行指標はもちろん、生産や出荷、企業収益といった一致指標も当分は悪い内容にならざるをえない。

だが、資産価格については、薄日が少しでも差し込み始めたところから反転が始まる。その意味で、現在のような「悲観の極み」の中で「光」をどこに見いだすかという視点が市場参加者には求められるだろう。

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