「悲観の極み」の金融市場で「光」を見つける方法 先行指標の中には底打ちを示すものもある

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では「光」を見つけるには何に注目すべきか。

答えは1つではないだろうが、筆者は中国PMIと類似の先行性を持ちつつ、中国経済の体温と論理的な相関が認められる客観的な計数として銅価格に注目している。銅の年間消費量の半分は中国の需要であり、かつ、現状では全世界的に需要が壊滅していることを踏まえれば、「中国経済の立ち直り」はそのまま「銅価格の立ち直り」に反映されると推測している。同じようなロジックで原油価格の動向も注目されるが、今の原油価格は政治的なヘッドラインに踊らされていて、ノイズが大きすぎる。

底打ちが見てとれる「銅」の価格

図のように銅価格は明らかに底打ちしているように見える。これは中国が一足先に感染拡大を(公式には)終息させ、経済活動が復元し始めていることの証左と読むべきだろうか。

中国では大企業の90%以上が操業を始めるなど企業活動の再開が伝えられている。上述のとおり、実情は指数が示すようなV字回復からはかけ離れているとしても「前月より悪化しなかった」ということ自体がポジティブなサインであり、こうした状況に銅価格の反転を重ね合わせて読むことは、無意味ではない。

ちなみにグローバルで見ても3月の製造業PMIは復調しているのでなおのこと、銅価格の反転には「光」を期待したいところである。株価を筆頭としてより足の速い資産価格が値を戻してくる手掛かりとして、銅価格の動きは見逃せないものがある。

もちろん、まだ「前を向こう」とまで言うつもりはないが、「悲観の極み」において底をつけるタイミングはほとんどの市場参加者が下を向いているときに訪れるものであり、先行指数には一段の注意が必要になると考えている。

※本記事は個人的見解であり、筆者の所属組織とは無関係です

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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